【高齢者の口腔ケア】目的と介助のポイント

高齢者の口腔ケアは、虫歯や歯周病だけでなく、味覚障害を防ぐためにも有効です。

しかし口腔ケアの目的や方法が分かっていなければ、正しいケアはできませんよね。

そこでこの記事では、高齢者の口腔ケアの目的や方法、ケアのポイントについて説明します。

正しい口腔ケアをサポートし、健康で爽快な毎日を過ごしてもらいましょう。

高齢者に口腔ケアが必要な理由とは

口腔ケアとは、口の中を清潔に保つことです。
高齢者にとって口腔ケアは特に重要ですが、加齢とともに体の機能が衰えると、自力で口の中の環境を整えることが難しくなります。

口の中の汚れや細菌を放っておいたり、適当なケアをしていたりすると、加齢による様々な問題を引き起こす恐れがあります。

高齢者に口腔ケアが必要な理由と口腔ケアを行う目的を理解しておきましょう。

理由1.自浄作用の低下

口の中は、適度な温度と湿度、さらに細菌の餌となる食べかすがあるため、細菌が繁殖するのに適当な環境といえます。

歯・歯間・舌・粘膜などに付着した食べかすや細菌を、唾液の力によって洗い流して綺麗に保つことを自浄作用といいます。
通常は、この自浄作用によって細菌の繁殖を抑えています。

しかし、高齢者は身体機能の低下から唾液の量が少なくなり、自浄作用が衰えます
自浄作用が衰えると、細菌や食べかすが唾液で取り除けず、細菌の温床になりやすくなってしまいます。

そのため、細菌の温床となる前に、意識して口の中を綺麗に保つ必要があります。

理由2.虫歯や歯周病になりやすい

高齢者の口の中は免疫力が低下しています。

そのため、細菌の繁殖が抑えられず虫歯や歯周病になりやすくなります。

また、歯茎が退縮して剥き出しとなった根元部分、歯と詰め物の隙間など、加齢に伴い細菌の棲家となる場所も増えます。

理由3.入れ歯に細菌が繁殖しやすい

高齢者は、入れ歯を使う人も多くなりますが、入れ歯と粘膜の間も、細菌が繁殖しやすい場所です。

入れ歯を装着したまま寝ると、入れ歯がカンジタ菌などの細菌の溜まり場となってしまいます。
入れ歯を使用している高齢者は、毎日の入れ歯のお手入れが重要です。

入れ歯は、口から取り外して歯ブラシで磨きます。
煮沸消毒や歯磨き粉の使用は避けましょう。

理由4.味覚障害につながる

高齢者の口の中は、自浄作用が衰えているため、舌の表面に舌苔が付きやすくなります。

舌苔とは細菌・食べかす・粘膜が付着した白い苔状のものです。
舌苔が増えると味を感じる味蕾を覆うため、味覚障害につながることもあります。

理由5.栄養不足防止

口腔ケアを通して加齢とともに衰える「噛む」「飲み込む」などの口腔機能の改善が期待できます。

口腔機能が改善されると十分な栄養が摂取でき、免疫力や体力の向上につながります。

理由6.認知症予防

口腔ケアで口の中の清潔を保ち、健康な歯を維持しておくことは、認知症予防につながります。

「よく噛む」「口を開ける」「口を閉じる」などの行為は、脳に酸素や栄養を送り届け、刺激を与えます。

結果的に脳が活性化され、認知症の予防につながるのです。

理由7.誤嚥性肺炎を予防する

高齢になると飲み込む力が衰えて、食べ物や唾液が気管に入ってしまうこと(誤嚥)が多くなります。

この際、口の中が汚れていると、唾液と一緒に細菌が気管を通って肺へ侵入して「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性があります。
高齢者にとって、誤嚥性肺炎は命に関わる病気です。

また、感染性心内膜炎や虚血性心疾患などとの関連も指摘されていてます。

誤嚥性肺炎などの全身疾患を予防するためにも、口腔ケアで口の中の清潔を保つことが大切です。

セルフケアとプロフェッショナルケアを使い分ける


口腔ケアにおける「セルフケア」とは、普段している歯磨き、フロス、うがいなど、自分自身で口の中を綺麗にすることです。

「プロフェッショナルケア」とは、歯科医や歯科衛生士が、専門的な技術を用いて口の中をケアすることです。
必要に応じて、口腔機能に対するリハビリテーションも行われます。

口の中を綺麗に保つためには、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方を使い分ける必要があります。

口腔ケアの基本は毎日のセルフケアです。
しかし、高齢になると身体的な衰えから口腔ケアが困難になることも多く、セルフケアだけでは限界があります。

そのため定期的に歯科医院へ通い、セルフケアでは清掃できない部位をケアしてもらうことが大切です。

プロフェッショナルケアでは、口の中の状況や全身状態に適したセルフケアの方法についてのアドバイスがもらえます。
毎日のセルフケアに活かしましょう!

高齢者の口腔ケアの正しい方法とは?

高齢者の口の中の健康を保つためには、口腔ケアを正しい方法で行う必要があります。
歯ブラシなど最適なツールの選び方、磨く部位や磨き方について紹介します。

どこを磨けばいい?

口腔ケアでは、歯の表面、舌、粘膜を洗浄します。

歯の表面は、ヌルヌルした汚れを取り除いて、ツルツルにするよう意識して磨きましょう。
磨き残しの多い歯と歯の隙間、歯と歯肉の境目、歯根の露出した部位は、特に念入りなケアが必要です。

ケアを忘れやすい舌や粘膜も、細菌が繁殖しやすい部位で放置すると口臭の原因となります。

しかし、歯磨きなどで強く擦ると味蕾を傷付けてしまいます。
できれば専用の粘膜ブラシを使用して、優しく磨くようにしましょう。

歯ブラシやツールの選び方

正しい口腔ケアを行うには、最適な用具を選び、使い分ける必要があります。
口腔ケアに使用する主な用具を紹介します。

  1. 歯ブラシ
    歯ブラシは、歯の汚れや歯垢を取り除きます。
    持ちやすく、毛先が柔らかめのものがおすすめです。

    歯ブラシの毛先を歯にしっかり当てて、小刻みに動かしながら1本ずつ丁寧に磨きます。
    歯を強く磨くと、歯の隙間にある汚れが取り除けず歯茎が痩せる原因にもなるため、軽い力で磨きましょう。

  2. デンタルフロス、歯間ブラシ
    糸ようじや歯間ブラシなどのデンタルフロスは、歯と歯の隙間など歯ブラシが届きにくい部位を清掃できます。

    歯と歯の隙間が広ければ、広い部位を効率的に清掃できる歯間ブラシが有効です。
    またはじめて歯間ブラシを使う場合や金属ワイヤーに抵抗がある場合には、ブラシ部分がゴムになったタイプがおすすめです。

  3. 粘膜ブラシ
    歯が少ない方、歯がない方は、粘膜ブラシを使用します。
    粘膜ブラシは、通常の歯ブラシよりも毛先が柔らかいという特徴をもち、傷付けずに舌や粘膜を清掃できます。

    粘膜ブラシを少量の水で湿らせて、舌や粘膜に付着した汚れや食べかすなどを絡み付けるようにして取り除きます。

高齢者の口腔ケアの3つのポイント

高齢者の口腔ケアは、1.可能な限り自力で行うこと、2.口腔ケアの必要性を理解してもらうこと、3.安全な姿勢で行うことが大切です。

ポイント1.可能な限り自力で

高齢者が使いやすい歯ブラシを使用して、可能な限り自力で口腔ケアを行ってもらいましょう。
歯ブラシを動かす動作は、手指のリハビリになります。

そのうえで、うまく磨けないところ、細かいところなどを確認し、高齢者が自力でできない部分は介助してください。

ポイント2.口腔ケアの必要性を理解してもらう

先述したように、口腔ケアを行う目的は口の中を清潔に保つためだけではありません。

介助者だけではなく、高齢者自身にも口腔ケアの必要性を理解してもらいましょう。
口腔ケアの必要性を理解できれば、高齢者自身も目的を持って毎日のケアができるようになります。

ポイント3.安全な姿勢で行う

なるべく座位で、あごをしっかり引いた安全な姿勢で口腔ケアを行いましょう。

口腔ケア中は、唾液の分泌が活発になります。
あごが上がった状態でケアをすると、唾液や汚れた水を誤嚥して、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。

ベッドの上で口腔ケアを行うときは、少なくとも30度以上は上体を起こし、後頭部にタオルなどを挟んで、あごを引いた状態を維持してください。

【参考】口を開いてくれない高齢者へはどう接する?

口腔ケアを行う際、高齢者が口を開けてくれないことがあります。

口を開けてくれないときは無理強いしないでください。
口腔ケアに対して、恐怖心や抵抗感がみられる場合は時間を置くことが大切です。

不安を抱かないよう信頼関係を作り、声を掛けながらケアを行うことで、安心感を持ってもらいましょう。

高齢者に口腔ケアを行うときは、なるべく短時間で、苦痛を感じないよう力加減に注意し、気持ちのよいケアを心掛けます。
今後も口腔ケアを続けていくためにも、爽快感を得てもらうことは、とても重要です。

全身の健康を守る口腔ケア


高齢者にとって口腔ケアは、単に虫歯や歯周病の予防に留まりません。
免疫力や体力の回復、誤嚥性肺炎の予防にもなり、全身の健康を維持する役割も担っています。

また、口の中を清潔綺麗に保つことは、食べる楽しみを思い出し生きる意欲の向上にもつながります。

高齢者の口の中は、自浄作用や免疫力の低下から、とくに細菌が繁殖しやすいため、口腔ケアは欠かせません。

ぜひ、口腔ケアが正しい方法で安全に行えるようサポートして、高齢者の健康を守りましょう!

【高齢者の口腔ケア】目的と介助のポイント

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