【在留資格介護】外国人労働者によって現場は変わる?

団塊の世代が75歳以上になる2025年、介護職員が全国で38万人不足すると言われています。

厚生労働省は「2025年に向けた介護人材の確保においては、国内人材の確保対策の充実・強化が基本」としつつ、外国人介護人材の受け入れ検討も進めています。

この記事を読んでいる方の中にも、

「外国人介護人材の受け入れ制度にはどんなものがあるの?」
「受け入れる流れはどうなっているの?」
「受け入れの問題点はある?」

といった疑問を持つ人もいると思います。
そこで本記事では、外国人介護人材の受け入れ制度や受け入れるまでの流れ、問題点についても伝えていきます。

外国人介護人材の受け入れ制度ポイント3つ

介護施設等で外国人を採用したいと思った場合に活用することができる受け入れ制度には、次の3つがあります。

  1. 「EPA(経済連携協定)」に基づく受け入れ
  2. 在留資格「技能実習」による受け入れ
  3. 在留資格「介護」による受け入れ

このように様々な制度を活用することができます。ではそれぞれどのような制度なのか詳しく見ていきましょう。

1.「EPA(経済連携協定)」に基づく受け入れ

「EPA(経済連携協定)」に基づく受け入れは、現在インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国から実施されています。

制度の開始年はそれぞれ、インドネシアが2008年、フィリピンが2009年、ベトナムが2014年、となっています。

制度の趣旨(目的)は、経済上の連携を強化する観点から、特例的に行われているものです。
これまでの受け入れ人数は3カ国併せて5600人を超えています(2018年8月末時点)。
経済上の連携を強化するのが目的であり、日本国内の介護人材不足を解消するための制度ではありません。

「EPA(経済連携協定)」に基づく制度にて外国人を受け入れたい場合には、「公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)」が斡旋・仲介してくれます。

受け入れの流れは、インドネシア・フィリピンと、ベトナムで若干の違いがあります。

インドネシア・フィリピンにおける受け入れの流れは次の通りです。

  1. 受け入れ事業者と介護福祉士候補者のマッチング
  2. 雇用契約を締結
  3. 母国にて6ヶ月の日本語研修
  4. 日本語能力試験(N5以上のみ)※フィリピンは受験義務なし
  5. 日本へ入国
  6. 日本語研修、介護導入研修(6ヶ月)
  7. 受け入れ施設での就労開始 ※同時に、国家資格取得のための研修・勉強

母国においても、日本に入国してからも日本語をしっかりと学ぶため、ある程度の語学力が担保されています。

しかし、雇用契約を結んでから実際に就労を開始するまでに1年以上の歳月を費やしてしまうのがデメリットとして上げられます。

ベトナムにおける受け入れの流れは次の通りです。

  1. 母国にて12ヶ月間の日本語研修
  2. 日本語能力試験(N3以上のみ)
  3. 受け入れ事業者と介護福祉士候補者のマッチング
  4. 雇用契約締結
  5. 日本へ入国
  6. 日本語研修、介護導入研修(2.5ヶ月)
  7. 受け入れ施設での就労開始 ※同時に、国家資格取得のための研修・勉強

ベトナムにおいては、マッチングの段階である程度の日本語をすでに学んでいます
雇用契約を結んでから実際に就労を開始するまで、比較的スピーディーに進めていくことができるのが特徴と言えるでしょう。

就労期間は最大4年目ですが、3年間の実務経験を終えた後、介護福祉士国家資格を受験します。
合格すれば介護福祉士として引き続き業務に従事でき、在留期間更新の回数に制限はなくなります。
しかし不合格の場合は本国に帰国しなければなりません。

参考:厚生労働省 経済連携協定に基づく受入れの枠組

2.在留資格「技能実習」による受け入れ

在留資格「技能実習」による受け入れは、日本から諸外国への技能移転が主な目的です。
国際援助の一環として2017年11月に制度が開始されました。

前述の「EPA(経済連携協定)」と同様に、日本国内の介護人材不足を解消するための制度ではありません。

この制度は、事業所内介護のみに適用されます。
訪問系のサービスでは雇用することができません。

在留資格「技能実習」により外国人を受け入れたい場合には、各監理団体が斡旋・仲介してくれます。

受け入れの流れは次のようになっています。

  1. 各監理団体に申し込み・求人
  2. 事業者の担当者が現地に赴き、候補者の面接・選考
  3. 本国で日本語研修(3ヶ月程度)
  4. 日本へ入国
  5. 日本国内で講習(1ヶ月程度)
  6. 企業にて技能実習開始

この制度では、申し込みから就労を開始するまでに6ヶ月程度の期間を要します。

実習期間は基本的に3年ですが、実習の各段階で技能評価試験をクリアすることで最大5年まで延長することができます。

3.在留資格「介護」による受け入れ

在留資格「介護」による受け入れは、専門的技術や知識等を活用して、日本の企業に就職することを目的として、2017年9月に制度が開始されました。

日本の介護人材不足を解消するため、大いに期待されている制度です。

しかし、在留資格「介護」による受け入れは、採用を仲介してくれる公的機関や団体は存在していません。
この制度を活用して外国人を受け入れたい場合には、ハローワーク等に求人を出すところから始めます。

受け入れの流れは次の通りです。

  1. ハローワーク等に求人を出す
    (※中途採用等ですでに在留資格「介護」を有している方を採用したり、在留資格「留学」を持っていて、介護福祉士養成施設で学んでいる留学生をアルバイトとして採用する方法がある)
  2. 面接・選考を行う
  3. 内定を通知する
  4. 在留資格の変更の有無を確認する
    (※在留資格「留学」を取得していても、介護福祉士の国家資格に合格し、実際に介護職として就職する場合には、入社日までに在留資格「介護」に変更してもらわなければならない。変更手続きは留学生本人にしてもらう必要がある)
  5. 採用

このように在留資格「介護」による受け入れは、通常の求人採用をする場合と大きな違いはありません。

また在留期間更新の回数に制限はないため、安定した人材の確保を行うことができます。

ここまでは外国人を採用したい時の3つの受け入れ制度について詳しく見てきました。

ではこの介護に外国人を受け入れる取り組みについて、何も課題はないのでしょうか?

【問題点はある?】外国人介護人材受け入れにおける課題

実際に外国人を受け入れ、採用した場合に問題点となることとして、主に以下の3つの課題が挙げられます。

課題1.日本語によるコミュニケーション
課題2.価値観や文化の違いによる人間トラブル発生の可能性
課題3.失踪するケースが急増

それぞれを詳しく見ていきましょう。

課題1.日本語によるコミュニケーション

本国や日本国内において数ヶ月間日本語を学習したとしても、日常会話や介護分野での専門用語を習得するのは難しいこともあります。

厚生労働省が2016年に行なった、「第12回外国人介護人材受入れの在り方に関する討論会」では、訪問介護にて、外国人介護人材を受け入れた場合に生じる課題について、次のものが挙げられました。

  • 利用者及び家族、介護職との連絡ノートへの記録や申し送りが適切に行えるか
  • 記録作成時に正確な漢字の使用や日本語独特のニュアンスを伝えられるか
  • 生活援助での調理において、日本人に合わせた味付けが可能か
  • 体調急変時や緊急事態発生時(クレーム対応含む)に臨機応変に対応できるか
  • 車両の運転、特に雪国での運転に不安はないか
  • 小規模事業者では研修体制を整備するのが難しいのではないか
  • 利用者の所有物が無くなり、犯人扱いされた場合、対応できるか
  • 外国人に対して偏見を持っている高齢者にどう対応するか
  • 引用元:厚生労働省 EPA介護福祉士の就労範囲に訪問系サービスを追加するに当たっての必要な措置について

以上の内容を見ると、介護技術面よりも、むしろ日本語でのコミュニケーションや記録の作成などが課題として挙げられるようです。

上記のものは訪問介護事業所での課題ですが、介護施設等においても同様のことが言えるかもしれません。

介護施設等においては、介護スタッフ同士でのコミュニケーションはもちろんのこと、看護スタッフなど他職種との連携も不可欠です。

日本人スタッフと外国人スタッフが、互いにコミュニケーションがよく取れなければ当然介護サービスの質は低下します。
介護記録等の作成が負担になる可能性も考えられます。

一緒に働く仲間としてコミュニケーションを強め、理解し合う努力が必要といえます。

課題2.文化の違いによるトラブル

日本と他のアジア諸国では価値観や文化の違いがあり、利用者また日本人スタッフとの間でトラブルとなる可能性も指摘されています。

価値観や文化が違えば互いへの接し方や、言葉遣い、考え方といったものは当然変わってきます。

互いの国の価値観や文化を理解し受け入れる企業風土や、外国人スタッフが新人のうちは先輩スタッフがしっかりサポートするなど職場環境の整備も必要です。

課題3.失踪するケースが急増

外国人スタッフを受け入れ後に突然連絡が取れなくなり失踪するケースがあります。
その背景には、事業所の法令違反や過酷な職場環境が関係していることも少なくありません。

厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の実施状況(平成29年)」によると、外国人の技能実習生を受け入れている事業所の7割が労働時間や賃金、また安全基準の面で法令違反しているという調査結果が報告されています。

なかには、最低賃金を下回る賃金で働かされていたり、職場で「いじめ」に発展しているケースもあるようです。

外国人介護士の失踪という問題を改善するには、労働基準に関する処遇改善を行い、日本人と同等の待遇で働けているのか見直しを行う必要があるかもしれません。

外国人介護士を受け入れる目的の理解を深めよう

介護の人材不足が叫ばれている昨今ですが、様々な外国人受け入れ制度が存在することが分かりました。

しかしそれと同時に、外国人を受け入れ、介護サービスを充実させるためには多くのハードルや課題も克服しなければなりません。

企業、施設側が制度の内容や趣旨をよく理解し、互いの価値観や文化を尊重し受け入れる職場環境が必要といえるのではないでしょうか。

【在留資格介護】外国人労働者によって現場は変わる?

この記事が気に入ったら 

編集部注目記事

サイト内を検索する