高齢者の寝たきりによる筋力低下を防ぐには?リハビリ方法は?

脳梗塞や骨折、認知症などの病気や老衰で起こるのが、高齢者の寝たきりです。

寝たきり状態でケアを怠ると、筋力低下だけでなく褥瘡などの廃用症候群を発症する恐れがあります。

少しでも心身の機能を高めるために、リハビリは欠かせません。

高齢者の寝たきりによる筋力低下を防ぐ方法をお伝えします。

高齢者が寝たきりになる原因は?

厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、介護保険の要介護認定で「要介護5」(ほぼ寝たきりの状態)の認定を受けた原因として最も多かったのが、「脳卒中」の30.8%です。

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)は発症後、半身麻痺や言語障害などの重い後遺症が残ることが少なくありません。
症状によっては軽い場合もありますが、もし脳の損傷が大きいときは、そのまま寝たきりになることが多いのです。

寝たきり(要介護5)の原因として脳卒中の次に多いのが「認知症」で、全体の20.4%を占めています。
認知症は初期の段階であれば、健康な人と変わらない生活できることが多いです。
しかし、症状が進行していくにつれて認知機能に加えて身体機能も衰えていき、末期になるとほぼ寝たきり状態になってしまいます。

そして3番目に多いのが、「転倒・怪我」の10.1%です。

怪我によって自由に動けなくなると、筋肉や関節の衰えが進みます。
身体が衰弱する中でやがて認知機能も低下していき、やがて寝たきり状態へと移するのです。

1日で3%減! 寝たきりによる筋力低下のリスクとは?

筋力は使わないほど低下していくため、寝たきりとなり離床時間が少なくなると、その衰えは加速せざるを得ません。
一般的に、安静状態でベッドに横になったままの状態が続くと、1日あたり1~3%、1週間で10~15%、3~5週間で約50%の筋力が低下すると言われています。

また、動かない状態が続いてしまうと起こるのが、関節周辺の皮膚や筋肉、軟部組織が変形していき、関節の可動域が減少する「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」です。
通常、不動のままだと、4日目から結合織の緻密化が生じ、2~3週間で関節拘縮が生じます。

寝たきり状態が続いて筋力や関節が衰えていくと、より体を動かさなくなるため、身体機能のさらなる衰えは避けられません。
そのまま状態の悪化が続くと、やがて運動器障害に加え、循環器や呼吸器の障害、さらに精神障害をも生じる「廃用症候群」を引き起こします。

低下した筋力を元に戻すのには、衰えた期間の倍以上の時間が必要です。
できる範囲でもリハビリに取り組まなければ、寝たきり状態のまま、心身機能の衰えは止められなくなります。

現状以上の容体悪化を防ぐためにも、筋力低下を予防するリハビリは重要になるわけです。

高齢者の寝たきり予防で早期回復へ!基本の3つのポイント

寝たきり状態となっても、日々のリハビリの努力によって、状態の改善・回復を目指すことはできます。

体に大きな負荷をかけず、できることから少しずつ取り組んでいくだけでも、努力した分の効果は期待できるでしょう。

以下では、寝たきり状態になった方が筋力低下を防ぐためにできることを、3つのポイントにまとめて紹介します。

起きれる時は座って過ごす

介護する側としては、要介護者に少しでも安静に過ごしてもらいたいと考えがちです。
しかし、安静な状態を続けるということは、それだけ筋肉を動かさない状態が長く続くということであり、体の衰弱を早めることにもなりかねません。

そのため、無理をしない範囲で、少しでも体を動かし、筋肉を使おうとすることが大事になるわけです。

寝たきり状態の方の場合、筋肉を使う機会はどうしても減少します。
それでも、もし上半身を起こして、座った姿勢を取ることができるなら、できるだけその姿勢を保つようにしましょう。
起きて座っているだけでも筋肉は使われ、特に呼吸筋のリハビリという点では、座位姿勢は効果的なのです。

もし自力で座位姿勢を保てなければ、介護ベッドのリクライニング機能を使ってもかまいません。

低栄養に注意する

高齢になると運動量が低下し、味覚や嗅覚も衰えることから、自然と食事の量が減っていくと言われています。
そして食べる回数が減り、食生活が単調になっていくと、直面するのが「栄養失調」です。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成28年)によると、65歳以上高齢者の約18%が、低栄養の状態にあるとのこと。
高齢者の約6人に1人が、必要な栄養が摂れていないのです。

こうした傾向は、運動をほとんど行わない寝たきり状態の高齢者の場合、さらに強まります。
70歳以上の高齢者だと、生活の大部分が座位の場合でも1日あたり1850カロリー以上必要と言われており、普段の食事量に問題がないかチェックすることが大事です。

特に寝たきりによる筋力低下が著しいときは、筋肉を作る動物性たんぱく質をきちんと摂取できていない恐れもあります。
血中のたんぱく質濃度を調べる数値として「血清アルブミン値」がありますが、正常値は4.0g/dl(グラム・パー・デシリットル)とされ、3.5g/dlを下回っている場合は何らかの栄養障害が疑われるのが一般的です。

もし低栄養状態が懸念されるときは、主治医に相談して検査を行い、状況に応じて対策を取ることが重要と言えます。
特に寝たきりの場合、血清アルブミン値や貧血の値が悪いと、褥瘡のリスクが高まるので注意が必要です。

生活介護でリハビリを取り入れる

リハビリは継続して行うことが重要なので、普段の生活介護の中で自然なかたちで取り入れていくことが大事と言えます。

例えば、着替えや排せつ、車いすへの移乗といった日常的な動作の中で、自分でできることを自力で行ってもらうことも一つの方法です。

また、オムツ交換や清拭時に、関節が硬くならないように下肢を動かすだけでもリハビリにつながります。
入浴できるなら、身体を温めながら、下肢を動かすのもおすすめです。

寝たきりの場合、リハビリにおいて最も大事なのは「できるだけ体を動かす機会を作ること」にあります。
体の可動部位が少なくても、自分の意思で積極的に体を動かせる時間が増えると、気持ちも前向きになるでしょう。

高齢者の寝たきり対策! 臥位のリハビリ方法

寝たきりの中で状態の改善、回復を目指していくには、全身の筋肉の中で大きな割合を占める下半身を鍛えることが大切です。
しかし、歩行や立位姿勢が難しい場合、寝た状態(臥位)のまま取り組まないといけません。

そこで以下では、仰向けに寝たままでもできるリハビリとして、「お尻上げ運動」、「太もも運動」、「ボールはさみ運動」、「頭上げ運動」を紹介しましょう。

お尻上げ運動

お尻上げ運動は、腹筋、背筋、臀筋(お尻の筋肉)を鍛えるために行います。
特にお尻にある大殿筋は、太ももを後ろに引っ張る役割を持ち、立位姿勢を目指す上で重要となる筋肉です。
寝たきり状態からの改善、回復を図るためにも、必要なトレーニングと言えます。

実際に行う際の手順としては、まず仰向けで横になっている状態を保ち、そこから両膝を曲げましょう。
それからお尻と膝に力を入れて、お尻を持ち上げます。
たとえお尻が思うように持ち上がらなくても、持ち上げようとして力を入れることが大事です。
力を入れてお尻を持ち上げたら、次にゆっくりとお尻を下ろしていきましょう。

太もも運動

大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とも呼ばれる太ももの筋肉は、人間の身体において最も大きな筋肉です。
体を支える上で重要な役割を果たし、歩行時の足を上げる力の源ともなるため、重力に抗して体を動かそうとする上で不可欠な筋肉と言えるでしょう。

取り組み方法としては、

  1. 仰向けに寝ている状態から、左足の膝を90度に曲げます。
  2. 右足の膝を伸ばしたまま、ゆっくりと上に挙げます。
    筋力が衰えている場合は力が入らず、上りにくいかもしれません。
    しかし、足を上げようとして力を入れましょう。
  3. 右足を上げたら(力を入れたら)、ゆっくりと力を抜いて下ろし、今度は反対の右足の膝を曲げて、左足を持ち上げていきます。

また、片方の膝の下にボーリングの玉くらいの大きさのゴムボール(ペットボトルやゴムボールでも可)を入れ、それを押しつぶすように足に力を入れるという方法も、太ももの筋肉を鍛える上で有効です。

ボールはさみ運動

ボールはさみ運動は、太ももの内側にある「内転筋」を鍛える上で効果のあるリハビリです。
内転筋を引き締めることで骨盤の位置が整い、重心を取りやすくなります。
また、内転筋が増えると体のバランスを保ちやすくなるので、寝たきり状態を改善させ座位、立位姿勢を保とうとする上で、欠かせない筋肉です。

取り組む上での手順は、

  1. 仰向けに寝た状態で両足の膝を曲げ、両膝でゴムボールもしくはクッションを挟み込みます。
  2. 「力を入れて挟む」「力を抜く」を反復します。難しい場合はボールを挟んだ状態を保持するだけでも効果的です。

頭上げ運動

寝たきりになると、口に入れた食べ物を飲み込む「嚥下(えんげ)」の機能が低下することが少なくありません。

頭上げ運動は、嚥下の際に必要な喉頭挙上(のど仏を引き上げる動作)を促すために行うリハビリです。
継続して取り組むことで、嚥下に欠かせない舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)や喉頭挙上筋群(こうとうきょじょうきんぐん)を鍛えることができ、嚥下機能の低下を防ぎやすくなります。

取り組み方法はシンプルで、仰向けに寝た状態から、足の指を見るように頭を起こすだけです。

しかし筋力が低下している場合は自力では行えないので、その場合は介護者が頭を持ち上げる手助けをするとよいでしょう。

リハビリで高齢者の寝たきりによる筋力低下を防ごう

寝たきりの状態で筋力低下がさらに進むと、廃用症候群の発症リスクが高まります。
体が活動する量・時間が減っているからこそ、積極的にリハビリに取り組む必要があると言えるでしょう。

寝たままの状態で取り組めるリハビリはたくさんあります。
心身機能をこれ以上低下させないために、自分なりのペースで筋力を維持、向上させていきましょう。

高齢者の寝たきりによる筋力低下を防ぐには?リハビリ方法は?

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