【地域包括ケアシステム】どうして必要?具体事例や今後の課題を解説!

高齢者に介護が必要になっても、住み慣れた地域で最後まで自分らしい生活を送れるよう、地域内でサポートし合うシステムが「地域包括ケアシステム」です。

この記事では「地域包括ケアシステム」が必要な理由、導入のメリット、具体的な事例や今後の課題を解説します。

【地域包括ケアシステム】とは

厚生労働省が推奨する「地域包括ケアシステム」とは、人生の最後まで住み慣れた地域のなかで生活できるように、地域社会がサポートしていく仕組みのことです。

地域の相談窓口でもある「地域包括ケアセンター」が運営主体となり、およそ30分以内に必要なサービスが提供できる範囲を生活圏域として想定しています。

地域包括ケアシステムの目的は、高齢者の尊厳の保持と自立した生活のサポートです。
高齢者の自立した生活は、認知症・介護予防につながります。

参照:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

地域包括ケアシステムの姿は、現状の専門サービス「介護」「医療」だけではありません。
「住まい」「生活支援」「介護予防」までを含め、相互に連携して高齢者の生活を支える体制づくりを目指しています。

そのうえで、加齢による身体的な能力の低下から生活に困難が生じても、必要な生活支援を受けることでなるべく自立した生活の維持を目指します。

介護が必要になったときには、訪問介護・通所介護などの在宅サービスが提供されます。

病気を患っていても、かかりつけ医や救急病院が連携し、往診や訪問看護など、その都度必要なサービスが提供されます。

「植木鉢」に例えられる5つの構成要素

地域包括ケアシステムを支える5つの構成要素である「住まい」「生活支援」「介護予防」「介護」「医療」は、植木鉢に例えられます。

参照:厚生労働省「地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」」

植木鉢の皿は、「本人・家族の選択と心構え」です。

医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域での生活を選択するという心構えを、高齢者本人と家族がもって、はじめて地域包括ケアシステムのケアを受けられます。
このことから、土台となる皿に例えられます。

植木鉢の鉢は、「住まいと住まい方」です。
心構えができたら、次に生活の基盤となる住まいの確保が必要です。

自宅だけではなく、都市型軽費老人ホームなど、高齢者のプライバシーや尊厳が十分に守られた安心できる住環境を提供することが前提となります。

植木鉢の土は、「生活支援・福祉サービス」です。
安心できる住まいのもと、必要によって生活支援や福祉サービスを提供します。
高齢者の自立した生活を支えることで、自分らしい尊厳のある生活の継続を目指します。

生活支援には、地域住民による声掛けや見守りから介護保険制度以外の地域サービスが含まれます。

元気な高齢者は地域交流の場に参加しつつ、支援が必要な高齢者を支える役割を担うことで、自身の介護予防に取り組むことが推奨されています。

植木鉢の葉は、「保健・予防」「医療・看護」「介護・リハビリテーション」です。
まずは、健康の維持・増進、介護予防の取り組みを行うことが大切です。

そのうえで、高齢者が抱える問題に必要なケアが、専門職によって互いに連携して提供されます。

葉の部分にあたる医療・介護の需要は、少子高齢化社会で増大する一方であるため、とくに大きく成長させなければいけません。

4つの「助」

地域包括ケアシステムでは、次の4つの「助」を連携させることで、直面するさまざま生活課題を解決していくことが求められています。

  1. 自助
    4つの「助」のなかでも基礎となる自助は、高齢者本人が主体となります。
    高齢者本人が、できる限り自立した生活ができるよう自分のことを自分でするという心構えをもつ必要があります。
    そして、積極的に健康管理・介護予防に取り組み、介護保険外の自費による市場サービスの購入も考慮していくなど自立した生活を目指します。

    しかし、高齢者自身で自立した生活を送るには限界があります。

  2. 互助
    互助は、家族や親戚、友人、ご近所同士による自発的な支え合いが基本となります。
    強制的な費用負担のないボランティアなどによる支援活動も含まれています。

    比較的元気な高齢者には地域でのボランティアへの参加を促すことで、自身の介護予防にもつなげてもらうという効果を期待します。

  3. 共助
    共助は、制度化された助け合いのことです。
    年金、医療、介護保険制度など、社会制度による扶助が含まれ、被保険者の負担や税金によって成り立ちます。
  4. 公助
    公助とは、貧困による生活の困窮や家庭内における虐待などの問題を公的な生活保護、人権擁護、虐待対策などにより支援することです。

このように地域包括システムは、「自助」はもちろん「互助」による地域での支え合いを基本としています。

しかし、人間関係が希薄化している地域社会において、なぜ地域包括システムの導入が推奨されているのでしょうか。

地域包括ケアシステムが必要とされる理由

日本は急速に進む少子高齢化問題に直面しています。
高齢者の人口が増えると介護が必要となる高齢者も増えます。

しかし、深刻な少子化、核家族化、共働き世帯の増加を背景に、介護の担い手が大幅に不足しています。

介護施設も不足する中で、行き場のない介護難民の増加は避けられません。

「団塊世代」の800万人が75歳をむかえる2025年には、介護保険などの公的な制度だけでは高齢者を支えきれなくなってしまいます。

そのため、ケアの場を病院や施設から在宅へと移行する流れになります。

また、在宅で暮らす高齢者の生活を支えるためには、地域の支援が不可欠です。
介護サービスの主体は国から地域へ移行する流れになります。

こうして、危機的状況をむかえる2025年の実現を目途に、地域ごとの特性に応じた地域包括ケアシステムの構築が進められることとなりました。

地域包括ケアシステムを導入するメリットとは?

市町村が地域包括ケアシステムを導入することで、地域で暮らす高齢者が得られるようになるメリットを紹介します。

自宅で生活を続けながら医療ケアを受けられる

地域包括ケアシステムが導入されると、地域の介護事業所と医療機関のネットワークがつくられ、介護と医療の一体的なサービスが提供できます。

例えば、通院が難しい高齢者でも必要に応じて往診、訪問看護、訪問口腔ケア、訪問リハビリなどの在宅医療が受けられます。

高齢者が急変したときには、介護師、医師、看護師が連携し、迅速な対応がとれるようになるでしょう。

このように、複数の疾患を抱えた高齢者でも、住み慣れた自宅で生活を続けながら、医療ケアを受けることができるようになります。

認知症の高齢者やその家族が暮らしやすくなる

認知症の進行を遅らせるには、早期発見と対策、早期治療が大切です。

地域包括ケアシステムを導入すると地域支援ネットワークができ、認知症の早期発見・早期支援体制が整います。

地域の住民が、認知症の初期段階から高齢者を見守ることができるようになります。

ネットワークを活用した認知症カフェなど、認知症の高齢者や家族の憩いの場も増えていくでしょう。

ニーズに沿った様々なサービスが生まれる

地域包括ケアシステムにおいて、個別のニーズに対して柔軟に対応できるサービスの提供が不可欠です。

今後は、地域のNPO・ボランティア・民間企業などの団体が主体となる多様な支援体制がつくられていく可能性があります。

買い物・調理・掃除などの家事や外出の支援を含め、ニーズに沿ったサービスが生まれることが期待されています。

高齢者と社会との接点が生まれる

少子高齢化、核家族化により一人暮らしの高齢者が増えています。
高齢者の一人暮らしは社会的に孤立しやすく、孤独感は認知症を発症する可能性を高めてしまいます
元気な高齢者には、積極的に地域交流の場へ参加をしてもらい、支援を必要とする高齢者を支える役割を果たすことが期待されます。

高齢者が社会との接点を持ち、自分の生きがいをみつけることが、認知症・介護予防につながります。

地域包括ケアシステムを導入した具体事例

すべての地域での2025年の実現を目指している地域包括ケアシステムですが、全国に先駆けて導入している市町村もあります。

その中から、世田谷区と鳥取県南部町の具体事例を紹介します。

人口過密地域の世田谷区の場合

世田谷区は、東京23区のうちでも最も人口規模の大きい地域です。
NPO、事業者、大学など約70もの団体が地域包括ケアシステムに参画することが可能です。

高齢者の交流の場である「せたがや生涯現役ネットワーク」は、多様な団体が連携、協力して高齢者の社会参加を促進しています。

地域包括ケアシステムの5つの構成要素についても豊富な資源やネットワークを活用してバランスよく取り組まれています。

住まい:豊富な社会資源を活用した都市型軽費老人ホームの整備を行うこと

介護予防:喫茶店・大学などを活用した高齢者の居場所づくり、元気な高齢者のボランティア活動の推奨を行うこと

生活支援・福祉サービス:空き家などの地域資源を活用した地域活動の拠点を設け、社民団体や社会福祉協議会が主体となり生活支援サービスの提供を行うこと

介護:高齢者が安心して在宅生活を送れるよう定期巡回・随時対応型訪問介護・看護の整備を行うこと

医療:福祉と医療の連携シートのよる情報共有化など在宅医療を推進すること

人口1万人ほどの鳥取県南部町の場合

人口1万人ほどの鳥取県南部町は65歳以上の高齢化率が31%の高齢地域です。

高齢者の共同住宅をつくり、地域の交流の場としても活用することで、自宅と施設の良さを併せもつ第3の住まいのあり方を提唱しています。

共同住宅には既存の民家・公的施設等を改修し、利用者の負担を可能な限り安価に抑えています

交流の場ともなる共同住宅においては、地域住民が必要に応じて見守りなどの生活支援サービスを提供をする地域の助け合いが実現できます。

医療や介護が必要となれば、訪問診療・訪問介護など必要に応じて地域の事業所から提供されます。

全国のモデル事例をチェック!

世田谷区や鳥取県南部町のように、それぞれの地域が自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムをつくりあげています。

例えば、13カ所のサポートセンターを設置して小地域完結型で提供できる集合体をめざす新潟館長岡市。

市が事務局となり在宅医療を推進する千葉県柏市。

暮らしのサポートセンターを設置し生活支援・介護予防に力を入れる大分県竹田市などがあります。

他にも、厚生労働省では各地域における先駆的な事例を紹介しています。
下記のサイトをご参照ください。

参照:厚生労働省「地域包括ケアシステム構築
へ向けた取組事例」

【地域包括ケアシステム】4つの課題

地域包括ケアシステムを構築するには、各地域が取り組まなければならない課題があります。

1.医療との連携

不治の病や複数の疾患を患っている高齢者が在宅で生活するには、医療と介護の協力体制が不可欠です。

医療と介護が連携し、在宅医療や訪問看護、リハビリテーションなどの支援を24時間体制で受けられるサービスの普及が課題となります。

2.住民への浸透不足

現状では、地域包括ケアシステムについて住民への浸透が十分ではありません。

地域包括ケアシステムの4つの助のうち、基盤となる「自助」には高齢者自身の意志が必要となります。

また、地域の人間関係が希薄化しているなかで、「互助」の充実を図るには、地域の人たちの協力が不可欠です。

そのため、地域包括ケアシステムの施策が広く伝わるよう、地域の人たちへの啓蒙活動を行なっていかなければなりません。

3.介護サービスの地域間格差

地域包括ケアシステムの構築は、各地域にゆだねられていますが、社会資源や人材・財源の充実度は地域ごとに異なります

サービスを提供する人材確保が難しい地域や充実したサービスを受けられる地域がでてくるなど、サービスの地域間格差が生まれる可能性があります。

4.介護業界の人材不足

介護業界の人材不足は深刻な問題です。

少子化・人口減少による介護の担い手不足に加えて、介護職の希望者が少ないことや離職率が高いことが要因にあげられます。

厚生労働省は、介護職の重労働、低賃金、劣悪な労働環境などのマイナスイメージを払拭するため、キャリアアップの仕組みづくりや処遇改善手当の支給を行っています。

また、外国人労働者を受け入れるための在留資格「介護」導入、同時に外国人介護職の受け入れや介護ロボットの導入なども進められています。

住民ひとりひとりが自分事として「まちづくり」する意識が大切

地域包括ケアシステムの導入が進むと、病院や介護施設に依存せずに、住み慣れた地域の中で老後の生活が送れるようになります。

高齢者が住み慣れた地域で過ごすには、本人や家族の意思と心構え、さらには地域住民の協力が必要です。

地域住民ひとりひとりが、高齢者とともに暮らせる「まちづくり」を意識していくことが大切となります。
まずは、お住まいの地域が地域包括ケアシステムを導入しているか確認してみてはいかがでしょうか。

【地域包括ケアシステム】どうして必要?具体事例や今後の課題を解説!

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