「家族の介護のために仕事を休まざるを得ない……」
そんな方にぜひ知って欲しいのが、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で規定されている【介護休暇】【介護休業】という制度です。
この記事ではこの2つの制度の詳しい仕組み、休業期間の過ごし方の注意点について紹介します。
【介護休暇】とは
介護休暇とは、怪我や病気、あるいは身体的・精神的障害などの理由で、家族に介護が必要になった場合に取得できる休暇です。
対象となる家族の介護のほかに、通院の付添いや買い物代行・介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行など、厚生労働省で定める対応も含まれます。
取得可能な日数
介護休暇で取得できる日数は、介護が必要な家族1人あたりに年間5日までです。
対象となる家族が2人以上であれば、最大で年間10日まで取得可能です。
事業所が別に定める場合を除き、4月1日から翌年3月31日を1年間として、介護休暇を希望する労働者が事業所に申し出ることによって取得できます。
介護休暇は時間単位や半日単位での取得が可能です。
半日単位で介護休暇を利用すると、年間10日に分けて利用できます。
対象の労働者
介護休暇を申請できるのは、事業所の雇用期間が半年以上の方です。
半年以上の雇用期間があれば、正社員はもちろん、アルバイトやパート、派遣社員、契約社員でも申請できます。
対象外の労働者
介護休暇は、事業所の雇用期間が半年未満である場合には取得できません。
1週間のうち所定労働時間が2日以下の方や日雇い労働者も対象外となります。
事業所と労働者が介護休暇に関する労使協定を締結している場合、雇用期間が1年未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者、雇用期間が93日以内に終了する労働者などは、対象外とすることもできます。
被介護者の範囲
介護を必要とする対象家族とは、介護休暇を申請する労働者からみて配偶者、子、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
ただし、養子や養親、事実上婚姻関係にあるものも含まれます。
休暇中の給与
介護休暇中の給与に関しては法的な規定はありません。
事業所ごとに違うため、無給または給料の何割かの支給になります。
大概の場合、有給休暇として取得したほうが金銭的に得になることが多いです。
申請方法
介護休暇の申請は当日に口頭で伝えても取得できることになっていますが、あらかじめ事業所に確認しておきましょう。
有給休暇のように自由に取得可能で、書類上の手続きも必要ありません。
【介護休業】とは
介護休業とは、対象家族が怪我や病気、あるいは身体的・精神的障害などの理由で、常時介護を必要とする状態にある場合に取得できる一定期間の休業のことです。
家族が2週週間以上の「常時介護を必要とする状態」であるとき、介護休業を取得できます。
「常時介護を必要とする状態」とは、下記1、2のいずれかに該当する状態をいいます。
- 介護保険制度で要介護2以上の認定を受けていること
- 項目①~⑫のうち、状態2が2つ以上、または3が1つ以上該当し、かつその状態が継続すると認められること
状態
項目 |
1 | 2 | 3 |
①座位保持(10分間一人で座 っていることができる) | 自分で可 | 支えてもらえればできる | できない |
②歩行(立ち止まらず座り込 まずに5m程度歩くことがで きる) | つかまらないでできる | 何かにつかまればできる | できない |
③移乗(ベッドと車いす、車い すと便座の間を移るなどの乗 り移りの動作) | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
④水分・食事摂取 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑤排泄 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑥衣類の着脱 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑦意思の伝達 | できる | ときどきできない | できない |
⑧外出すると戻れない | ない | ときどきある | ほとんど毎回ある |
⑨物を壊したり衣類を破くこ とがある | ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
⑩周囲の者が何らかの対応を とらなければならないほどの 物忘れがある | ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
⑪薬の内服 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑫日常の意思決定 | できる | 本人に関する重要な意思決定は できない | ほとんどできない |
取得可能な日数
介護休業は、要介護状態にある対象家族1人につき93日以内の範囲で、分割して3回まで取得可能です。
家族が要介護状態から一旦回復し、再度要介護状態になってしまった場合などは、その都度介護休暇を申請できます。
介護休業を取得できる労働者とは
介護休業を取得できる対象者は、要介護状態にある家族を介護する労働者です。
事業所の雇用期間が1年以上であれば、正社員、アルバイト、パート、派遣社員、契約社員も含みます。
介護休業を予定している開始日から数えて93日経過しても、引き続き雇用契約が続く必要があります。
介護休業は、事業所の雇用期間が1年未満である場合には取得できません。
日雇い労働者も対象外となります。
事業所と労働者が介護休暇に関する労使協定を締結している場合、雇用期間が1年未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者などは、対象外とすることもできます。
被介護者の範囲
介護を必要とする対象家族とは、介護休業を申請する労働者からみて配偶者、子、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
ただし、養子や養親、事実上婚姻関係にあるものも含まれます。
介護休業中の給与
介護休暇と同様に介護休業中の給与に関しては法的な規定はありません。
事業所の規定次第で、無給または給料の何割かの支給になります。
被保険者期間が1年以上の雇用保険加入者は「介護休業給付金」が受給できます。
介護休業終了日の翌日から2ヶ月後の月末までに、事業所を経由して管轄のハローワークへ申請すると、休業開始時賃金日額×支給日数×67%の支給額を受給できます。
ただし給付金が支給されるのは、介護休業期間が終了し審査に通過した後になります。
被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行なうことも可能です。
その際、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、介護休業給付金支給申請書などの必要書類が入ります。
また、すでに休業中の場合は申請できません。
申請方法
介護休暇の申請は、休業開始予定日の2週間前までに事業所に書面で申し出る必要があります。
介護休業予定日の前日までは、介護休業の撤回が可能です。
申請が遅れた場合、事業所が申請日から2週間の範囲内で介護休業開始予定日を指定できます。
事業所から、医師の診断書など家族が要介護状態にあるという証明を求められることがありますが、書類が提出できなくても介護休業は取得できます。
要注意!【介護休業】は仕事と介護を両立するための調整期間
本来「介護休業」は、仕事と介護の両立をサポートするための制度です。
介護休業期間中に介護だけをしていると、取得可能日数の93日間はすぐに過ぎてしまいます。
中にはそのまま離職を選択する人もいます。
2017年総務省の調査では年間10万人が介護離職をしていますが、再就職を希望しても1年以内に就職できるのは、3~4人に1人という厳しい現実があります。
また、厚生労働省の調査によると、仕事と介護の両立による負担を軽減させるために介護離職をしても、実際には半数以上の方が精神・肉体のどちらも負担が増したと感じています。
介護離職により収入が減ることで使える介護サービスも絞らなければなりません。
介護休業中は離職をしなくてもよくなるように、仕事と介護を両立するための調整期間として利用し、今後の体制づくりに費やしましょう。
施設介護か在宅介護か決める
まず、介護休業中に在宅、施設のどちらを主体にするか決めておきます。
在宅介護を選択するなら、かならず市町村の窓口で介護保険制度の要支援・要介護認定を受けましょう。
認定されるとケアマネージャーが相談に乗ってくれます。
どんな介護サービスを利用するのか決める
孤立して抱え込みやすい介護には介護保険制度の介護サービスが欠かせません。
ケアマネージャーと相談し、必要な介護サービスを利用しましょう。
在宅で受けられる訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなどの介護サービスを組み合わせることで、今後も仕事が続けられるか検討しておきましょう。
ひとときも目が離せない状態であれば、介護サービスを利用しても、在宅での介護と仕事の両立は難しくなってきます。
その場合は介護施設への入居も考えてみましょう。
介護施設には特別養護老人ホームなどの公共施設と介護付有料老人ホームなどの民間施設があります。
家族や親族と話し合いを
また、介護休業中に家族の意向も聞いておき、今後の介護体制を整えておく必要があります。
介護には、大きな身体的・肉体的な負担がかかります。
兄弟や親族がいるなら、誰が中心になって意思決定するか、その他の人は何をどう分担するかなどきちんと決めておく必要があります。
休職制度を賢く使って介護と仕事の両立を目指しましょう!
介護の休職制度は、まだまだ認知度も低く理解を得にくい職場もあります。
しかし、「介護休暇」「介護休業」ともに育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)に規定され、対象者は申請する権利があります。
事業主は介護休暇・休業の申請を拒否できないことになっています。
また、介護休暇を取得した者が不利益を被るような解雇、降格、減給、賞与削減なども法律で禁止されています。
高齢化が進む社会では今後も介護離職が増え続けることが予想されますが、「働き盛り」の人々が介護のために退職することは、企業や社会全体にとっても損失です。
「介護休暇」「介護休業」は、どちらも仕事と介護の両立をサポートするためにある制度です。
離職を考えるまえに、介護休業を取得して実際に介護を経験しながら、仕事と介護が両立できる方法を検討してみてはいかがでしょうか。