【介護の腰痛】原因や手軽にできる予防法は?

力仕事が多い介護現場では、介護者の腰痛が深刻化しています。

腰痛が改善せずに介護を続けていると、椎間板ヘルニアなどの病気を発症する恐れがあります。

症状悪化を防ぐポイントは、コルセットベルトの着用ボディメカニクスの実践です。

腰痛で介護ができなくなる前に、適切な方法で症状の悪化を防ぎましょう。

介護で腰痛に。放っておくとどうなる?

介護で腰痛になった場合には、そのままにしておくのは良くありません。
何も対策をしないで介護を続けていると、腰痛が悪化する恐れがあります。

そして、ひどくなれば椎間板ヘルニアなどの病気に発展し、退職を余儀なくされる可能性も出てきます。

厚生労働省の平成29年業務上疾病発生状況によると、「休業4日以上の腰痛の発生件数」は介護職が含まれる保健衛生業が1,593件で最も多い結果となっています。

業種 件数
保健衛生業 1,593件
商業・金融・広告業 864件
製造業 760件
運輸交通業 709件
その他の事業 301件
接客・娯楽業 271件
建設業 230件
清掃・と畜業 174件
貨物取扱業 91件
農林水産業 58件
鉱業 0件
合計 5,051件

参考:厚生労働省 平成29年業務上疾病発生状況

保健衛生業の発生件数は他業種と比べても群を抜いて多く、介護職が腰を痛めやすい業種だということがよくわかります。

具体的に腰に負担がかかる業務には次のようなものがあります。

  • ベッドから車椅子への移乗
  • 移動するときの介助
  • 入浴介助

そして、無理に持ち上げてしまう、身体の使い方が間違っている、といったことが腰痛を招くため、日頃からの対策が必要なのです。

介護で腰痛が起こる原因とは?

腰痛の原因は人それぞれですが、介護職に腰痛が多いのには特定の原因が考えられます。

また、介護では無理な体勢を取ることが多くなりますが、身体の使い方としてはどんな問題があるのでしょうか。

力仕事が多い

次のような業務は力が必要なため、腰痛を引き起こしやすいと考えられます。

  • 移乗介助
  • 入浴介助
  • トイレ介助
  • おむつ交換
  • 体位交換
  • 更衣介助

これらの業務の共通点からもわかるように、腰痛を引き起こしやすいのは前かがみや中腰と言った体勢です。

また、人を抱き上げる動きでも腰を痛めやすいと言えます。

ボディメカニクスを活用できていない

無理な体勢で介護をすると腰を痛めます。
これは、ボディメカニクスを理解していないことから起こります。

例えば、床から重い荷物を持ち上げるときに、膝を曲げずに腰だけを曲げて持ち上げる人は多いのではないでしょうか。
このような場合、腕はかなり疲れますし腰も痛めやすくなります。

介護業務に例えると、自分の膝は立てた状態で利用者さんと身体を密着させずに移乗介助するようなものです。

これでは、ボディメカニクスを活用できているとは言えません。

ボディメカニクスとは、力学の考え方をもとにして小さな力で安全で効率的に介護するための技術のことです。

そして、ボディメカニクスを理解して介護をすれば、腰を痛めずに介護ができます。

ポイントはボディメカニクス! 手軽にできる腰痛予防

ボディメカニクスを活用して介護をするには、どんなことを覚えておけばよいのでしょうか?

また、日頃からストレッチをしていれば腰痛予防になるため、簡単なストレッチも併せて紹介します。

ボディメカニクスの基本ポイント

ボディメカニクスの基本は以下の8つです。

  • 身体を近づける
  • 利用者さんの腕や足を組んで身体を小さくする
  • 支持基底面を広くする
  • 重心を低くする
  • 身体をひねらない
  • 水平移動する
  • てこの原理を使う

身体を近づける

介護者と利用者さんの身体を近づけることで、重心は近くなります。
重心が近くなると力は伝わりやすくなり、安定性が高まります。

利用者さんの腕や足を組んで身体を小さくする

利用者さんの腕や足を組むと摩擦面が少なくなるため、腰は痛めにくくなります。

支持基底面を広くする

支持基底面とは、身体が地面に付いている部分のことです。
支持基底面が広くなると安定性は高まるため、介護する際には足を開くことがポイントです。

重心を低くする

重心を低くすると倒れにくいというメリットがあります。
そのため、介護者は腰を落として重心を低くしましょう。

身体をひねらない

身体をひねってしまうと姿勢が不安定になるため、身体はひねらずに膝をまげて重心移動することが大切です。

水平移動する

水平移動は重力の影響を受けにくいため、介護者の負担は少なくなります。

てこの原理を使う

てこの原理は効率的な力の使い方のため、介護者は膝をベッドに押し付けて支点とすれば小さな力で大きな力を発揮できます。

持ち上げない介護で腰痛予防

ボディメカニクスの基本をおさえつつ、

  1. 持ち上げないこと
  2. 腰を落としてスライドさせる

この2つを意識することで、腰痛は予防できます。

具体的には、ベッドから車椅子への移乗介助や、寝たきりの方をベッド上で移動介助するときなどです。

また、利用者さんにはできるかぎり自分でできることは自分でやってもらうようにしましょう。
これは介護者の腰痛予防のためだけではなく、利用者さんが自立して生活するためにも重要なことです。

時間がないとき、急いでいるときなどは腕の力だけで介護をしがちですが、それは腰を痛める原因です。
腰痛をひどくしないためにもボディメカニクスはしっかりと理解しましょう。

日頃のストレッチで腰痛予防

腰の筋肉や関節の柔軟性が低下してくると、腰痛を起こしやすいと言われています。
加齢による筋肉の老化は誰しも避けられませんが、日頃からストレッチをしていれば筋肉はやわらかい状態が保てます。

そこで、腰痛予防に役立つ簡単なストレッチを紹介します。

ストレッチのポイントとしては、伸ばしていて気持ち良い程度にすることです。

・腰のストレッチ(仰向け)
仰向けになって、上半身はそのままで下半身だけを左右にひねります。

・腰のストレッチ(立ったまま)
腰に手を当てて上体を反らします。
次に同じ姿勢のまま左右に腰を回転させます。

・背筋のストレッチ
上半身を抱えこんで、おへそを見るようにして背筋を静かに伸ばします。

・背骨のストレッチ
椅子に座った状態で腰に手を置き、おへそを見るようにして腰を丸めます。
次に腰を反らせ、これを繰り返します。

・おなかのストレッチ
仰向けになって腰の後ろにタオルを巻いたものを入れて腰を伸ばし、おなかをゆっくりと伸ばします。

・太もものストレッチ
椅子などにつかまったまま、左手で足首を持って左足の太ももの前側を伸ばします。
左足が終わったら右足も行います。

コルセットやベルトを活用! 腰痛予防に役立つツールを紹介

腰痛対策としてはボディメカニクスやストレッチは有効です。
しかし、今すぐに腰痛を何とかしたい!という人であれば、コルセットや骨盤ベルトといったツールを使ってみましょう。

また、福祉用具を活用することでも腰痛は予防できるため、そちらも見ていきましょう。

コルセットやベルトを活用

コルセットや骨盤ベルトは、着用すると正しい姿勢に補正してくれます。
そのため、負担を軽減したい場合にはうってつけのツールです。

そして、コルセットは療養費の対象です。
医師の指示によってコルセットやサポーターといった治療用装具を購入した場合、「療養費<治療用装具>」を申請することで健康保険から費用の一部が戻ってきます。

申請に必要なもの

  • 保険証
  • 銀行口座
  • 医師の証明書、診断書、指示書の原本
  • 内訳がわかる領収書の原本
  • 印鑑

参考:全国健康保険協会 療養費について
参考:厚生労働省 治療用装具療養費について
参考:東村山市HP

スライディングボードなど福祉用具を活用

スライディングボードなどの福祉用具を利用すれば、介護者の負担は少なくなり、腰痛予防に役立ちます。

スライディングボードとは、表は滑りやすい素材で裏は滑り止めがついている福祉用具です。

スケート選手が練習で左右に滑っているボードのようなもの、と言えば想像しやすいのではないでしょうか。

ベッドから車椅子への移乗のときに使い、利用者さんの身体の下に敷いて身体を滑らせて楽に移乗できることが特徴です。

うまく使うコツは、ベッドの方を車椅子よりも少しだけ高くすることです。

また、介護保険では福祉用具貸与のサービスが受けられる場合があります。

対象となるものは以下のものです。

  • 車いす(付属品含む)
  • 特殊寝台(付属品含む)
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  • 自動排泄処理装置

参考:厚生労働省 福祉用具貸与p1

参考:厚生労働省 介護保険における福祉用具の概要

腰痛予防で楽しく介護を続けよう

介護と腰痛は切っても切り離せない存在と言えます。
厚生労働省の平成29年業務上疾病発生状況を見てもわかるように、介護職で腰痛に悩む人はたくさん存在します。

介護は移乗介助や入浴介助など力仕事が多くなるため、日頃から腰痛予防に取り組むことが何よりの対策です。

また、ボディメカニクスを理解すること日頃からストレッチをすることで、腰への負担は大幅に減らせます。

現在は介護者を助けてくれる福祉用具もたくさんあるため、それらをうまく利用して楽しく介護を続けましょう。

【介護の腰痛】原因や手軽にできる予防法は?

この記事が気に入ったら 

編集部注目記事

「ヘルパー2級」資格は「初任者研修」に変更に!影響は?仕事は変わる?

初任者研修って、何ですか? 研修ってついてますけど…… ユマケア編集部 初任者研修は介護の入門資格ですよ! 興味があるん…

漫画・安全か?プライドか?

漫画「安全か?プライドか?」(ゆるゆらり)

ユマケア編集部 ブログ「ヘルパーおかん。アラフィフ専業主婦からのハローワーク。」で知られるゆるゆらりさん。 介護職の役割…

漫画「介護施設の利用者さまの幻聴幻覚がなくなった理由」

漫画「介護施設の利用者さまの幻聴幻覚がなくなった理由」(pinky)

初めまして。 「家事ときどき介護~介護も一息、今度は育児!?~」という漫画ブログを描いている、pinkyと申します。 1…

【高齢者とのコミュニケーション】ポイントや注意することは?

高齢者とのコミュニケーションで大切なポイントは、「聞くこと」と「話すこと」。 特に話し方は、【言語】【準言語】【非言語】…

【ケアマネージャーの選び方】どう付き合う?途中で変更はできるの?

数多くある居宅介護支援事業所からケアマネジャーをどのような基準で選んだらよいのでしょうか。 ケアマネジャー次第で要介護者…