【介護事故】どんなケースが多い?予防するための対策は?

介護の現場で1番避けなければならないのが事故。
事故を起こしてしまうと利用者にケガを負わせてしまうことになります。

事故を避けるためには現状の把握注意点の意識が必要です。

今回は介護現場での事故の現状や事例、注意点を紹介し、事故を起こしてしまった場合に書くことになる報告書についても解説します。

介護における事故の統計

【事故状況分類】

入所サービス:転倒・転落・滑落84.5%、誤嚥・誤飲・むせこみ2.9%、対人トラブル0.4%
訪問サービス:訪問先の紛失・破損に関する賠償56.3%、転倒・転落23.2%、来訪時の交通事故4.2%
通所サービス:転倒・転落・滑落78.0%、誤嚥1.2%、対人トラブル0.4%

利用者への人身傷害事故に注目すると、全てのサービスで転倒・転落が最も高い割合で発生しています。

【傷病状況分類】

入所サービス:骨折63.5%、打撲7.8%、あざ・腫れ・擦り傷・裂傷7.4%
訪問サービス:骨折54.5%、打撲15.2%、あざ・腫れ・擦傷・裂傷12.1%
通所サービス:骨折55.1%、打撲16.7%、あざ・腫れ・捻挫・裂傷9.3%

全てのサービスで骨折する利用者が多いことが分かります。
高齢者は骨粗しょう症などで骨がもろくなっていることが多いため、骨折が起きやすいと考えられます。

参考:公益財団法人介護労働安定センター

介護現場で見られる事故

介護現場では、大きく分けると以下のような事故が起きています。

  • 転倒、転落:浴室での転倒、ベッドからの転落など
  • 介護ミス:薬の服用ミス、介助中に表皮剥離させたなど
  • 誤飲、誤嚥:食べ物以外のものを飲みこむ、むせる
  • 食中毒、感染症:O157やインフルエンザなど

事故の中でも転倒・転落事故が多い

事故の中で最も多いのは転倒・転落ですが、以下のような状況で起こっています。

  • 不適切な介助
  • 立ち上がる時
  • 車椅子からベッドなどへの移乗時
  • 車椅子介助時
  • 職員や利用者との衝突

介護中だけでなく送迎中の事故にも注意

事故は、施設で過ごしている時間だけでなく、自宅と施設間の送迎中にも起こっています。
ここでは送迎時の注意点を、朝と夕方に分けて紹介します。

朝の送迎時の注意点

  • アルコールが残らないよう、送迎の前日は飲み過ぎないようにする。
  • 通勤ラッシュに巻き込まれないようにルートを事前に確認し、時間にゆとりをもつ。
  • 免許証や携帯電話など、忘れ物がないか確認する。
  • 利用者の移乗がスムーズにできるように、車内が清掃されているか確認する。
  • 適切な服装・髪型を心がけ、介護がスムーズに行えるようにする。

夕方の送迎時の注意点

  • 運転前にストレッチをするなど、運転中に眠気が出ないようにする。
  • サングラスを持参するなど、夕日の眩しさに対応する。
  • 特に秋から冬は日が暮れるのが早いため、夕暮時の視界の悪さに注意する。
  • 交通事故に注意する(中でも16~20時に発生することが多い)

過酷な介護現場ほど事故が起きやすい

事故が起きやすい状況のひとつに、介護現場の過酷な勤務状況が挙げられます。

  • 夜勤が続いている。
  • 人手が足りない。
  • サービス残業が当たり前で、帰宅時間が遅い。

このような状況が続き十分な休息がとれていないと、的確な判断ができません。
また、通常は複数で行うところを1人で行うと、安全な介護ができなくなるので事故が起きやすくなります。

ワタミが起こした介護の事故事例

「ワタミの介護」が経営する介護付き有料老人ホームに入所していた女性が、入浴中に死亡しました。
当初は、スタッフが10分間程目を離した隙に倒れており、病死の可能性が高いとの説明でした。
しかし、その後の調査で、実際には入浴中に1時間半程放置していたことが分かりました。

施設側は、他にも入居者がおり手が回らなかったと説明しています。

ベネッセが起こした介護の事故事例

ベネッセの関連会社であるベネッセスタイルケアが運営する「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で、入居者の女性の人工呼吸器が停止し、死亡しました。
准看護師が夜に痰の吸引をするために人工呼吸器の電源を切りましたが、再起動させておらず、酸素不足による窒息死に至りました。

この事故が起きる2ヶ月前にも、看護師が人工呼吸器の電源を入れ忘れるという事故が発生しており、それを家族や運営会社には伝えておらず、再発防止を怠ったとされています。

人工呼吸器のチューブは、長時間外すとアラームが鳴る仕組みになっています。
本来は吸引中であっても電源を切りませんが、アラームが鳴るのを防ぐために習慣的に電源を切っていたものと思われます。

女性施設長は「医療行為は医師や看護師に全て任せきりになっていた」と話しており、働く介護スタッフも含めてチェックできていたら、早期発見できた可能性があります。

介護の事故の責任は誰にある?

事故を起こしたとき、問題となるのは誰に責任があるのかです。
ここでは、法人とスタッフ個人、それぞれに責任が課せられる場合について説明します。

事故の責任が法人に課せられる場合

介護サービスを提供する法人には、安全配慮義務があります。
安全に介護を提供するため、法人として行うべき業務がしっかり行われていない場合、責任が問われます。

具体的には、

  • 利用者の情報を共有し適切な介護が行われるような仕組みが作られていない
  • 段差をなくす・手すりをつけるなどの環境整備が行われていない
  • スタッフのシフト管理がずさん

などが挙げられます。

事故の責任が介護職員に課せられる場合

例えば、介護福祉士の場合は、社会福祉士及び介護福祉士法により、誠実義務が定められています

これは、常に利用者の立場にたって誠実に介護を提供しなければならないという意味です。

さらに、介護福祉士は国家資格であり、介護のスペシャリストとして知識や技術をアップデートしなければいけません。

このような個人としての努力を怠り、独自の考えで引き起こした事故に対しては、スタッフ個人としても責任が課せられます。

介護現場で事故が起きた場合は報告書を書く必要がある

万が一、介護現場で事故が起きてしまった場合には、報告書を書く必要があります。

介護サービス中に死亡や重症、食中毒などの事故が起きたときは、市町村への報告書提出が義務となっています。

では、報告書はどのような点に注意して書けばよいのか、書く目的と注意したいポイントについて紹介します。

報告書を書く目的

  • 事故の原因を分析し、再発を防止するため。
  • 介護の仕方や事業所のあり方などを見直し、介護の質を上げるため。
  • 事実として残し、訴訟などもしもの時にスタッフを守るため。
  • 正しい情報を時間をあけずに開示することで、隠蔽を防止し利用者の家族とのトラブルを避けるため。

報告書を書く時のポイント

  • 分かりやすいように短い文章で書く
  • 事故の状況(日時や場所)、内容、どのように対応したかなどを客観的な視点で事実のまま書く
  • 公的な書類になるので、専門用語や略語、施設独自の言葉を使わない

介護の事故は隠蔽されることも?

介護事故は、当事者であるスタッフが正直に話さなければ隠蔽される可能性があります。
「この位なら大丈夫」「黙っていればバレない」というような思いがあると、隠蔽に繋がる可能性が高くなります。
さらには、「報告書を書くのが面倒」という怠慢も、隠蔽が起きる原因のひとつとして考えられます。

隠蔽はあってはならないことです。
働く一人一人が、介護事故に対する意識とモラルを向上させるように努めましょう。

さらに事業所全体として、事故を起こしたスタッフを責めない、報告書を提出しやすいといった雰囲気作りも隠蔽予防に役立ちます。

介護の事故を防ぐための対策

事故を防ぐために、以下のポイントを確認しましょう。

・事故が再発する可能性があるか
事故は、1度起こったら終わりではなく、再発する可能性もあります。
その場合には、どのようにしたら再発が防げるのか対策を考えましょう。

・他の事故につながるリスクはあるか
例えば、誤飲・誤嚥は、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となり、最悪の場合は死亡する可能性もあります。
事故がさらに大きな事故になる前に、予防する必要があります。

・現場の業務に支障があるか
利用者にとって過ごしやすい環境に整備したとしても、スタッフの業務に支障があると困ってしまいます。
どちらにとっても良い環境になるよう、調整しましょう。

・ヒヤリハットから事故に発展しないように
ヒヤリハットの時点で共有することによって、事故を未然に防ぐことができます。

事故を起こさない介護が大切

事故の原因は、利用者本人、スタッフ、環境と複雑に絡み合っています。
そのため、事故が起きる危険性や要因となるものを正確に把握し、予防策を立てる必要があります。

利用者の状態や周囲の環境もずっと同じではないので、アセスメントし続け、常に新しい情報に基づいた介護を提供しなければなりません。

利用者や家族、スタッフ間でコミュニケーションを密にとり、安全・安心な介護に繋げましょう。

【介護事故】どんなケースが多い?予防するための対策は?

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