【ユマニチュードとは?】認知症ケアにどんな効果がある?実践するには?

認知症ケアの最前線である「ユマニチュード 」は、人間らしさを取り戻せる関わりの技術です。

認知症のさまざまな症状によって、本来あるべき姿を取り戻せずに過ごしている高齢者は多くいます。

一方で、ケアを拒否される介護職や看護職は、ジレンマを多く抱えていますよね。

そんな双方のジレンマを解決できる「ユマニチュード」を始めてみませんか?
ユマニチュードの効果実践方法など詳しく解説します。

認知症ケアの最前線! ユマニチュードとは?

我が国では超高齢社会に伴い、認知症を患う高齢者が増えています。

全国の65歳以上の高齢者について、認知症を患っている高齢者の割合は15%で、約462万人の推計です。

2025年には700万人に増え「高齢者の5人に1人」が認知症になると言われています。

認知症の症状は、単なる物忘れだけではありません。

コミュニケーションがうまく取れなかったり、ケアを受け入れることができなかったり、寝たきりで笑顔がなくなったり、さまざまな問題が発生します。

笑顔がなくなり性格が変われば、本来の「その人らしさ」を失ってしまいます。
そこで、人間らしさを取り戻す関わりの技術として注目されているのが「ユマニチュード」です。

ここで、簡単にユマニチュードの歴史概念を説明しましょう。

40年もの歴史があるユマニチュード

ユマニチュードはフランスで生まれた技術で、40年もの歴史があります。

創始者の1人であるイヴ・ジネスト氏は、介護拒否などケアが困難な患者さんと向き合い、現場で試行錯誤を重ねてきました。

そして、たどり着いた答えが「人として認め、大切に思っていることを伝える」ということです。

ユマニチュードの基本である4つの柱、見る・話す・触れる・立つは、「あなたのことを大切に思っている」ことを伝える技術であり、人間らしさを取り戻すための働きかけでもあります。

彼らが当初より取り組んでいる「立位による清拭」は、 立てるはずの人を寝たきりにしないための合理的かつ最善のケアです。

まさに、人間らしさを取り戻す技術そのものですね。
ユマニチュードによって笑顔が増えて、以前のような社交性を取り戻した人もいます。

介護・医療職の“やりがい”にもつながる

ユマニチュードでは、患者ではなく「人と人との関係、絆の質」に重点を置きます。

ケアを拒否していた認知症の人が、ケアを受け入れるように変化する場合もあります。
ケアを拒否されてジレンマを感じていた介護職や医療職の“やりがい”にもつながるのです。

人間らしさを取り戻せるユマニチュードは、認知症ケアにおいて重要な役割を担います。
介護される側もする側もポジティブな感情を抱くようになり、ケアの質が高まります。

しかし、個人ではユマニチュードの達成はとても難しいものです。

なぜならユマニチュードは統一した関わり方を通して、しっかりと時間をかけないと十分な効果を得られないためです。

つまり、施設や病院全体で取り組む必要があります。

日本では介護や医療の現場での人員不足によって、ユマニチュードの実現は難しいのが現状です。

しかし、そんな中でも、ユマニチュードを導入し効果を実感している施設があります。

ユマニチュードの導入施設をはじめ、基本の技術やおすすめの研修先を紹介しましょう。

効果は絶大!? ユマニチュードで人間らしさを

認知症の人に「どのように変わってもらいたい」ですか?

「笑顔になってほしい」「ケアを受け入れてほしい」「生き生きと暮らしてほしい」などさまざまな答えがありますよね。

人と人との関わりを大切にするユマニチュードでは、患者さんだけでなく、支援する側の気持ちも大切です。

目指す方向性を定めるためにも、ユマニチュードから得られる効果や基本の技術を学んでいきましょう。

ユマニチュードの効果とは?

認知症を発症すると、病気による症状から言葉や態度が攻撃的になることも少なくありません。

時には叩かれたり、傷つく言葉を投げかけられたり、憤りを感じてしまうこともありますよね。

マイナスの感情をお互いに抱く時こそ、役立つのがユマニチュードの関わりの技術です。

ユマニチュードの効果は、攻撃的な症状が治まるだけではありません。

以前のように社交的な姿を取り戻せたケースや、寝たきりで無表情な認知症患者さんが笑顔を見せるまでに回復したケースも多く報告されています。

認知症患者さんから笑顔が増えれば、ケアもしやすくなり、介護職や医療職のやりがいにもつながります。

相乗効果で介護離職を防ぐ効果も期待できるのです。

ユマニチュードの基本「4つの柱」

ユマニチュードの効果を最大限に発揮するためにも、基本姿勢について理解しましょう。

ユマニチュードの基本は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱です。
それぞれの動作がもたらす効果や実践のポイントを説明します。

見る

お互いに目線を合わせて見る動作は、相手に平等な関係性を伝えます。

寝たきりの場合でも上から見つめるのではなく、必ず腰を落として目線を合わせることが重要です。

近くから、並行して、正面から、長い間瞳と瞳を合わせる動作が、相手へポジティブさや愛情を表現する手段になります。

忙しさのあまり、手元の作業を進めながら話しかけてはいませんか?
一旦手を止めて、改めて認知症患者さんと向き合う姿勢が、ユマニチュードでは重要なポイントです。

話す

話す時は、早口や力強い言葉ではいけません。
穏やかに、そしてゆっくりと、前向きな言葉を投げかけるようにしましょう。

相手から反応がない場合には、コミュニケーションが途絶えないように、自分の手の動きを実況中継します。

「オートフィードバック」とも呼ばれ、言葉を絶やさないような工夫が必要です。

触れる

相手に触れる動作は、「タッチング」とも呼ばれ、安心感を与えます。

広い面積で、優しくゆっくり触れることで、柔らかい愛情を表現できます。

人には自分を守るためのパーソナルスペースがありますので、敏感な手や顔に最初から触れるのは危険です。

話しかけながら、肩や背中から順番にタッチングをしましょう。
また、親指をかける鷲づかみや指先だけでの触れ方は、相手に強制力や攻撃性を感じさせてしまいます。

立つ

立つ動作は移動する手段だけでなく、料理や掃除などさまざまな動作の基本です。

立つことで筋肉を使うだけでなく、呼吸器系や循環器系の機能が活発になります。

血流が良くなって、身体のすみずみまで栄養が行き届けば、褥瘡(じょくそう)などの病気を予防できます。

それまでは立って生活をしていたのですから、立つことは人の基本的な欲求です。
さらに、人であることの尊厳を自覚できる手段と言えます。

つまり、立つ動作を援助することは、人間らしさを取り戻すきっかけになるのです。

見る・話す・触れる、の包括的なコミュニケーションと、自己の尊厳を実感できる「立つ」動作を援助することが、ユマニチュードにおいて基本かつ重要なポイントです。

どれも、特別な資格や技術は必要ないですよね。

立つ動作を援助するためには人手が必要ですが、それ以外は普段のコミュニケーションに少し工夫を加えるだけです。

簡単に取り入れることができる技術なので、ぜひ実践してみましょう。

特別な資格や技術は必要なし! 5つのステップを実践しよう

次に、ポジティブな感情をお互いに抱くための5つのステップを紹介します。

特別な資格や技術は必要ありません。
「人と人との関係、絆の質」に重点を置くことを忘れずに、チャレンジしてみましょう。

1.出会いの準備[来訪を伝える]

人と人とのコミュニケーションは、出会いから始まります。
どのようなシチュエーションでも第一印象は大事ですよね。

出会いの場でマイナスな感情を抱かないような、工夫が必要です。

やり方は、居室を3回ノックして3秒待つ動作を2回繰り返します。

それでも反応がなければ、1回ノックして室内に入ります。

3回ノックすることで相手に来訪を伝え、3秒待つことで相手が受け入れるかどうか選択してもらいます。

2.ケアの準備[相手との関係性を築く(友だちになる)]

これから行うケアの内容を説明するのではなく、まず「あなたに会いに来た」というメッセージを伝えましょう。

相手を大切に思う気持ちをきちんと伝えるための手段です。
背後から声をかけるのではなく、正面から近づき、瞳と瞳を合わせます。

目が合ってから3秒以内に、話し始めましょう。
ポジティブな言葉だけを使って、見る・話す・触れるの基本技術を活用します。

3分以内に同意が得られなければ、出直しましょう。

3.知覚の連結[心地よいケアの実施]

ケアの同意が得られたら、次にケアを実施します。
この時は、見る・話す・触れるのうち少なくとも2つ以上を同時に使いながら、ケアを実施しましょう。

ケアを進めていく中で、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを継続的に届けます。

伝える言葉と行動が矛盾しないように、調和をもたせながらケアをしましょう。

4.感情の固定[ケアの心地よさを相手の記憶に残す]

感情に伴う記憶は、認知機能が低下した人にも最後まで残ります。

そのため、マイナスな感情を相手の記憶に残すのではなく、ケアをして心地よかったポジティブな感情を残しましょう。

ケアが心地よいもので、「あなたと過ごせて嬉しかった」ということを伝えると、ケアを素敵な体験として感情記憶に残せます。

5.再会の約束[次回のケアを容易にするための準備]

ケアが終わったら、「また来ますね」と再会の約束をします。

認知症の場合、再会の約束を忘れてしまう時もあります。

しかし、自分に優しくしてくれてた人が、また会いに来てくれる喜びや期待の感情は、記憶にとどまります。

次のケアの時は、この時のポジティブな感情が思い起こされて、笑顔で迎えてくれるのです。

5つのステップによってケアが不快なものではなく「心地よくて喜びに満ち溢れているもの」に変えます。

認知機能が低下しても、最後まで残る感情記憶に働きかけるのが、ユマニュードの技術です。

「この人なら良い時間を過ごせる」と思ってもらうために、5つのステップを丁寧に進めましょう。

ユマニチュードの専門性を高めよう! おすすめの研修先は?

ユマニチュードの効果を十分に発揮するためには、研修を受けて専門性を高める方法をおすすめします。

おすすめは、株式会社エクサウィザーズが開催する研修です。

エクサウィザーズが企画・運営する研修は、日本で唯一、正規のユマニチュードを扱っています。

SAS Humanitude社(本社:フランス共和国、法定代理人:Yves Gineste/イヴ・ジネスト)と提携し、東京医療センターの本田美和子医師監修の下、全て認定インストラクターにより行われます。

専門職向けの研修は3つのコース、一般者向けの研修は1つのコースに分かれます。

入門コース

入門コースは、初めてユマニチュードを学ぶ専門職を対象にした2日間の研修です。

全日程を受講した場合、参加証が交付されます。

期間 2日間
受講者要件 初めてユマニチュードを学ぶ看護・介護職などの専門職
受講料 1人あたり32,400(税込)円〜
研修内容
  • ユマニチュードの哲学
  • ユマニチュードの技法
  • ケア実践のための5つのステップ
  • 基本実技演習
  • 質疑応答

実践者育成コース

実践者育成コースでは、基本技術を包括的に用いることができる実践者の育成を目指します。

入門コースよりも、専門的かつ実用的なユマニチュードが学べます。
入門コースと同じく、修了後には参加証が交付されます。

期間 2日間
受講者要件 医療・福祉施設に勤める専門職で、ユマニチュード入門コースなどを修了していること。
受講料 1人あたり57,240(税込)円〜
研修内容
  • ユマニチュードの哲学や正しいレベルのケアの選択などの講義
  • 立位、歩行介助や体位変換、オムツ交換など包括的に技術を用いる実技演習
  • ベッドの使い方など技術紹介

施設や団体向けコース

施設や団体向けコースでは、施設導入準備コース施設導入フォローアップコースに分かれます。

施設導入準備コースは、医療・福祉施設においてユマニチュードの導入を中心となって進める実践者を育成します。

その後は、施設導入フォローアップコースを受講でき、ユマニチュードの導入をバックアップしてくれます。

施設導入準備コースの詳細は、以下の通りです。
修了資格には、ユマニチュード施設内指導者として更新されます。

期間 10日間
受講者要件 医療・福祉施設に勤めていて、日常的にケアを実践する専門職
受講料 1人あたり378,000(税込)円〜
研修内容
  • ユマニチュードの全体像を学ぶ
  • 活動を客観的に評価し、確実に技術を習得する
  • 自施設への具体的な導入方法を学び問題解決能力を身につける

一般者向けコース

一般者向けコースは、基本の哲学技術が学べる研修です。
どなたでも、気軽に参加できます。

期間 1日(2時間)
受講者要件 どなたでも可
受講料 1人あたり6,480(税込)円〜
研修内容
  • ユマニチュードの哲学
  • 4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」の基本技術

日本初のユマニチュード! 導入施設を紹介

日本でユマニチュードを導入した施設は、東京医療センター福島県郡山市医療介護病院が有名です。

今回は、福島県郡山市医療介護病院の取り組みを紹介しましょう。

同病院では、平成26年からユマニチュードを導入し、ケアの質を高めることに取り組んでいます。

全看護職員がユマニチュードの短期講習を受講し、施設全体で取り組む姿勢が評価されました。

ユマニチュードの導入前と後ではケアの負荷が減っただけでなく看護師の視点が大きく変わったそうです。

以前までは「変化なし」で記録内容が終わっていました。

しかし、導入後は「呼びかけにまぶたが動く」など患者さんからのメッセージを見逃さない記録内容に変化したそうです。

ケアを受ける人もする人も、双方を救うユマニチュードは、施設全体で取り組む姿勢が重要なんですね。
参考:一般社団法人群山医師会 群山市医療介護病院『認知症ケア学会「石川症」受賞について』

ユマニチュードで人間らしさを取り戻そう

ユマニチュードは、人と人との関係や絆の質に重点を置くため、ケアを受け入れやすい環境に変化します。

認知症の人の笑顔が増えて、自分らしさを取り戻す効果も期待できます。

ユマニチュードは特別な資格や技術を必要としません。
まずは、基本の4つの柱5つのステップをマスターして、実践してみましょう。

ユマニチュードの効果をより実感するためにも、施設全体で研修に取り組み、専門性を高めてみてはいかがでしょうか。

参考:リクルートドクターズキャリア『ユマニチュードの哲学とは』
参考:厚生労働省『認知症施策の現状について』
参考:ユマニチュード研修案内『コース案内』

【ユマニチュードとは?】認知症ケアにどんな効果がある?実践するには?

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