食事介助のポイントは?姿勢や手順、誤嚥予防の注意点

施設にいる利用者の楽しみの1つが食事。
おいしい食事は、利用者の満足度を上げる要因の1つです。

しかし、間違った食事介助から食事が楽しくなくなったり、ストレスになったりすることがあります。
利用者の満足度を上げるためにも、正しい方法で食事を提供しましょう。

今回は高齢者の食事介助について、食事前から食事後までの流れと注意点を紹介していきます。

高齢者の食事の変化

高齢になると食事に以下のような変化が現れます。

1.機能低下

胃粘液分泌量の減少、腸の運動能力の低下などにより、胃もたれ、便秘、消化不良、下痢などを起こしやすくなります。

のどの周りの筋肉が衰え、唾液の分泌量が減少し、嚥下機能が低下します。
気管に食べ物が入りやすくなり、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。

2.乾燥したものが食べにくい

のどの筋力低下や唾液分泌量の減少により、乾燥しパサパサしたものが食べにくくなります。

パンやビスケット、サツマイモ、せんべい、干し芋などは、むせないよう工夫が必要です。

3.好みの変化

のどの筋力や嚥下機能が低下すると同時に、歯や顎の力が衰えます。
のど越しが良く、あまり噛まなくても良いやわらかい食べ物を好むことが多くなるでしょう。

味覚が衰えるため甘さや辛さを感じにくくなり、濃い味付けを好んで食べるようになります。

嗅覚も鈍くなり、おいしそうな匂いがしても食欲をそそられなくなるため、食欲が低下します。

食事の流れ

食べ物を認識し飲み込むまでの一連の動作は、5つの段階に分けられます。
それぞれのプロセスを確認しましょう。

1.先行期(認知期)
五感を駆使して食べ物を観察し、うまく摂取するための判断をします。
食べる準備を始める時期です。

2.準備期
口腔内に食べ物を送り込み咀嚼します。
唾液と混ぜ合わせて食べ物の塊を形成する時期です。

3.口腔期
舌を使って食べ物の塊を口腔から咽頭へ送り込む時期です。

4.咽頭期
嚥下反射により、食べ物の塊を咽頭から食道の入口へと送り込む時期です。
気管に入ることを防ぐ一連の動作が行われます。

5.食道期
蠕動運動と重力により食べ物の塊が食道から胃に送られる時期です。

食事介助の目標

食事介助の目標を理解すれば、正しい食事介助の必要性が見えてきます。
2つのポイントを押さえておきましょう。

QOLの向上

QOL(生活の質)の向上と食事には深い関係があります。

食べる意欲を持つことで、生活に張りが出ます。
食べること自体が楽しみや喜びにつながる機会も多いでしょう。
食事の場所に人が集まることで交流も生まれます。

食事介助には、これらのプラス要素を最大限に引き出す役割が求められます。

疾病予防

正しい食事介助により疾病の予防効果が期待できます。

1.発熱

風邪の他、感染性の胃腸症状、脱水などによって発熱することがあります。
手洗いなどの衛生管理、水分摂取量などに注意して予防することができます。

2.誤嚥性肺炎

食物を飲み込む際に、謝って気管や肺に入ることで発症する肺炎を誤嚥性肺炎と言います。
正しい食事介助が予防の要になります。

3.認知症、心臓病、糖尿病

塩分や糖分などを配慮したバランスのよい食事を摂取することは、これらの疾病の予防につながります。

食欲不振や、体調不良、機能不全などに対して適切な食事介助が必要になります。

食事介助前の注意点

食事介助前には、どのような注意が必要なのでしょうか。
ポイントと実施するメリットについてまとめてみました。

排泄を済ませておく

食事前は必ず排泄を済ませておきましょう。

済ませておけば余計な我慢をしたり、途中で食事を中断したりする心配がなくなります。
食事に集中できるため食欲増進にもつながります

また、食事中に自室で排泄を行えば部屋に臭いがこもります。
食事が進まなくなる可能性がありますので、食事前に行ってから部屋の換気をした後に食事をするようにしましょう。

食事しやすい環境作り

食事に集中できるようテレビは消しておきましょう。
ゆったりとした音楽などが流れるリラックスできる環境が理想です。

楽しい雰囲気を演出できるよう、親しい人と席を近くするのもいいですね。

口腔内や手を清潔にする

口腔内を清潔にすると、味を感じやすくなり食が進みます
唾液分泌量が増して、食べ物が飲み込みやすくなります。
細菌が気管に入り込むことを防ぎ、誤嚥性肺炎を予防できます。

手を綺麗することは、風邪などの感染症予防につながります。
認知症の方は手づかみで食べてしまうことが多いので、洗うのが難しければ、ぬれタオルなどを利用するといいですね。

唾液の分泌を促すトレーニング

唾液は口腔内を保湿し、食べ物の塊を飲み込みやすくします。
消化液として働くと同時に、味を感じやすくする役割も果たしています。
口の中を清浄化し、口腔粘膜を保護する働きも担っています。

高齢になると唾液分泌量が減少し、これらの効果が得られにくくなります。
分泌を促すためには唾液腺のマッサージが有効です。
顔面にある3つの唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下線)を刺激しましょう。

1.耳下腺
位置:両頬の上の奥歯と耳の間
方法:人差し指で円を描くように、やさしくマッサージするとよいでしょう。

2.顎下腺
位置:あごの骨の内側の左右のやわらかい部分
方法:指の腹を使って耳の下からあごの先まで4~5箇所に分けてマッサージします。

3.舌下線
位置:下あごのくぼみ部分(舌の付け根の辺り)
方法:親指の腹で軽く圧迫するように押します。

献立の説明

あらかじめ献立を説明することで期待感が高まります。
自発的に食べたいと感じ、食事に集中できるようになります。

また、説明に対する反応によって好みや苦手を把握できます。
摂取量を増やすために順番やタイミングを変えるなどの対策を講じやすくなります

食事介助の時の高齢者の適切な姿勢

食事介助の体位はもっとも重要なポイントです。
適切な体位と、その根拠について説明しましょう。

自力で座れる人

上体をできるだけ90度に近い状態に保ちます。
膝も90度に曲がるようにし、足をしっかりと床につけます。

深く腰掛けた状態でこの角度になるよう、椅子の高さを調節します。
あごを引いた姿勢になるよう、背中や頭の後ろにクッションを入れて安定させましょう。

テーブルの高さは、軽い前傾姿勢で腕を乗せた時に肘が90度に曲がるくらいがベストです。
椅子とテーブルはなるべく近づけます。

このようにすれば、お腹や腰に力が入りやすくなり体が安定します。
重力で食べ物がスムーズに食道へ運ばれますので、誤嚥を防ぐことができます
テーブル全体が見えやすく食べやすいので、食欲増進にもつながるでしょう。

車椅子の人

一般的な車いすは前方がやや高くなっているため、前方に重心を移動させにくくなっています。
フットレストに足を乗せたままだと、この傾向がさらに強くなります。

食事を食べやすくするためには、クッションを使用したり、車いすの下に台を置いたりして、重心を移動しやすくする必要があります。
できればフットレストをあげ、足を床に着けるとよいでしょう。

リクライニング車いすの場合は90度近くまでアップするのが理想です。
ただし個人差がありますので45度~80度くらいで無理のない角度を選びましょう。
安定しにくいなら背中や頭にクッションや枕を入れて調整します。

ベットの人

リクライニング車いすと同じように本人の状況に合わせて45度~80度くらいの角度で調整しましょう。

腰はベッドの折り目にしっかりと合わせ、隙間ができないようにします。
膝は軽く曲げ、下にクッションなどをはさみましょう。

首の下から後頭部のあたりに枕やクッションを入れて首を安定させます。
首が後ろにそり過ぎないよう気をつけましょう。

食事介助の手順

食事介助の手順とポイントを押さえておきましょう。

1.安全な姿勢
上記した注意点に従って安全な姿勢を確保します。

2.エプロンの着用
食べこぼしても大丈夫なようエプロンを着用します。

3.隣に座る
対面に座ると威圧感を感じますし、立って行うと顎が上がりやすくなり誤嚥を誘発します。
必ず隣に座って同じ目線で介助を行いましょう。

4.水分補給
食事を始める前にお茶や水などで水分を補給します。
口の中を湿らせて嚥下をスムーズにさせる効果があります。

5.水分の多いものから食べさせる
誤嚥がもっとも起きやすいのは最初の一口目です。

まずは汁物など水分の多い食べ物からスタートしましょう。
胃酸の分泌を促進しますし、飲み込みやすいので適度なウォーミングアップにもなります。

6.主食、副食、水分を交互にバランスよく食べさせる
同じ食べ物ばかりを食べると飽きたり、味気ないと感じたりします。
自分が食事をする感覚を思い出しながら、バランスよく食べさせましょう。
合間で水分補給することも忘れずに。

7.食事後は摂取量を確認する
健康状態や満足度、食欲を妨げる要因などを把握するのに役立ちます。
嗜好や傾向を知って改善するきっかけにもなります。

8.食事後の口腔ケア
自力で可能なら歯磨きを促します。
不可能なら義歯の洗浄などの適切な介助を行います。
感染予防のためにマスクや使い捨て手袋を使用して行いましょう。

認知症の人の食事介助

食欲自体が減退する方もいます。
好みの食器を用いたり、温かさや冷たさにメリハリをつけるなど食欲を促す工夫をしてみましょう。

中には食べる行為自体を忘れてしまう方もいます。
一緒に食事をとったり、うまく声掛けしたりすれば改善することがあります。
いろいろ試してみて、その方にあった方法を見つけましょう。

また、食べた後なのに「食べていない」と訴えることがよくあります。
否定しても理解できないことがほとんどですので、1日分の量を同じにして回数を増やすなどして対応しましょう。

他にも手づかみで食べたり、食べ物で遊んだりする問題行動が見られます。
強く否定せず、原因を探りながら本人が安心できる対策を講じると良い結果を招くようです。

ただし、危険な行為に関してはこの限りではありません。
食べ物では無いものを食べる、のどに詰まらせるなどの場合は、見守りの徹底や事前の水分摂取などの適切な対応を早急に行いましょう。

片麻痺の人の食事介助

介助者はかならず患側側に座ります。
こうすると、健側側から介助を行いやすいからです。

もし、患側側から介助を行うと口の中も麻痺しているため嚥下や咀嚼ができません。
患側側に座ることで患側の異常を発見しやすいメリットもあります。

片麻痺の場合、麻痺側に食べ物が残留しやすいので注意が必要です。
舌で麻痺側から健側へ食物を移動してもらい食物の残留を認識してもらいます。
その上でしっかりと嚥下を促しましょう。

誤嚥させないために注意すること

誤嚥性肺炎は繰り返し起こりやすく、重症化すれば命に関わります
介助者は誤嚥させないよう細心の注意を払わねばなりません。
以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

1.口に運ぶ時には斜め下から行う
真正面や上から運ぶと、それに合わせて顎が上がってしまい誤嚥の原因となります。

2.口に含んでいる時は声掛けを避ける
返事をしようとしたり、集中できなくなったりするためです。
これらの行為は誤嚥を誘発します。

3.口の中に溜め込まない
一口の量を適切な量に調整し、一口一嚥下を徹底します。
のどぼとけの動きや実際の口の中を見て、飲み込んだことをきちんと確認しましょう。

4.食事を急かさない
言葉で急かさなくても、食べている時に目前でスプーンを構えるなどの行為はプレッシャーを感じさせます。

ただし時間をかけすぎると疲れて誤嚥しやすくなる場合もあります。
30分前後を目安にしましょう。

正しい食事介助で利用者の満足度を上げよう

「食事が楽しみ」だと感じる方は多いのではないでしょうか。
認知症や片麻痺を患う高齢者の方々も例外ではありません。

正しい食事介助を行えば、その楽しみを何倍にもすることが可能です。

逆に間違った介助をすれば楽しみを奪ってしまうどころか、健康を損ね命を奪うきっかけを作ることにもなりかねません。

すべての介助者が、このことを認識する必要があります。
知識を深め、日々工夫を重ねて利用者の満足度を上げることが求められています。

食事介助のポイントは?姿勢や手順、誤嚥予防の注意点

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