【介護職のキャリアパス】導入のメリットは?導入の手順やモデル事例を紹介!

今、介護職員のキャリアプランを明確にする「キャリアパス」の導入が推奨されています。

キャリアパスを導入することで、介護業界の問題のひとつである「離職率の高さ」が改善されると期待されています。

キャリアパスを導入し介護スタッフ個人がキャリアアップを望みやすくなることで、モチベーションが改善されると考えられているからです。

この記事ではそんな介護業界のキャリアパスについて、メリットや導入の手順、モデル事例を紹介します!

介護業界におけるキャリアパスとは

引用:サイト

参照:厚生労働省「介護人材の機能とキャリアパスについて」p.10

キャリアパスとは、“仕事上の地位や役職に就くまでの経歴や道筋”のことです。

介護職のキャリアパスとは、専門性の高いチームケアを提供できる人材を育成するための仕組みのことです。

  • 介護の基礎知識の向上
  • チームリーダーの育成
  • キャリアアップのサポート

などの狙いがあります。

キャリアパスがすすめられる背景に「人手不足」

日本は2025年問題も間近に迫り、利用者のニーズは複雑化・多様化・高度化しています。

実際に、介護職が一部の医療行為を実施できるような制度も整ってきました。
一方で介護の現場は、離職率の高さも影響し慢性的な人手不足です。

離職率が高い原因のひとつは、介護職のキャリアアップも含め働き方にギャップがあるためです。

つまり、介護職に求められる能力は高くなる一方で、能力が上がる前に離職してしまい人材が育ちづらいという背景があります。
離職率を改善しなければ慢性的な人手不足は解消されない状態なのです。
そのため、専門性を高める「キャリアパス」の導入が、今の介護の現場に求められています。

キャリアパスの導入によって、現在のニーズに応じた専門性の高い介護職の育成ができるだけでなく、キャリアアップが明確になり離職率を下げる効果も期待できるのです。

>深刻な介護士の不足…データからわかる問題点は?改善策は?

キャリアパスを導入するメリットは?

キャリアパスを導入することは、働く介護職員と導入する事業所の双方にメリットがあります。

お互いにメリットがあるため、導入する事業所のサービスの質が向上することも期待されます。
では、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
介護職員、事業所、それぞれのメリットを解説します。

【介護職員】4つのメリット

まず介護職員の視点では、キャリアパスの導入で4つのメリットがあります。
介護職は低賃金と言われることが多いため、給料面にも注目して見ていきましょう。

1.目標が明確に!

目指す地位や役職に応じて、必要な資格や能力、年数がハッキリとわかるため、今後の目標が立てやすくなります。

また、キャリアパス導入に際しては「介護職員としてのあるべき基本指針」が設定されているため、介護職員としてどうあるべきかが理解できます。

■各ステップにおける経験年数のイメージ

ステップ1 概ね1年程度
ステップ2 概ね1〜3年程度
ステップ3 概ね3〜5年程度
ステップ4〜6 概ね5年以上

■各ステップにおける職位のイメージ

ステップ1 初任者
ステップ2 現任者
ステップ3 リーダー
ステップ4 副主任、主任
ステップ5 管理職
ステップ6 施設長、管理者

参考:厚生労働省「キャリアパスガイドライン(素案)(1)経験年数および職位イメージ 」

2.社会力や介護力が向上する!

キャリアパスを導入すると基礎から教育ができるため、社会人として必要なスキル(社会力)や利用者に対する介護のスキル(介護力)が身につきます。

そのため、介護未経験者でも安心して学べる環境が整います。

また、経験年数や職位に応じて身につけるべきスキルに関する目標が明確です。

スキルの成果が目に見えてわかりやすいのも大きなメリットです。

■社会力
就業する上で必要な社会人・組織人としてのスキルをいいます。

ステップ1 良好な人間関係を築くためのコミュニケーション能力や基礎力を養う。

・社会的常識が理解できる
・介護職員としての自覚を持ち、責任ある行動ができる
・所属する組織の基本理念や心構えを理解できる。

ステップ2 利用者や職員に対して良好な人間関係を保てる。

・利用者に対し、基本的人権を尊重しながら、自己決定を最大限に尊重して自立へ向けた支援ができる。
・利用者の理解ができ、利用者・家族との良好な人間関係を保てる。
・組織人として適切な行動ができる。
・チームの一員として継続した連携・協働ができる。

ステップ3 組織人としての自覚を持ち、初任者などの模範となる行動ができる。

・社会的に模範となる行動ができる。
・組織の基本理念や心構えを指導できる。
・リーダーシップを発揮してチームケアを実践できる。

■介護力
福祉・介護分野の幅広い知識や支援方法、介護技術を習得した上で、利用者の人権を尊重したアプローチができるスキルをいいます。

ステップ1 指導を受けながら、日常の介護業務に従事できる。

・基本の介護技術を習得できる。
・利用者の安全・安楽を第一に考えて行動できる。
・職場に適応できる。

ステップ2 自立して日常的な介護業務に従事できる。

・介護職員として自立した行動ができる。
・利用者の人権を尊重し、個別性を重視したアプローチができる。
・初任者などからの相談を受けて、的確に答えることができる。

ステップ3 一般的な介護知識・技術や職業倫理をもって、チームケアを実践できる。

・エビデンスに基づく介護を展開でき、初任者などに指導ができる。
・個別的で専門性の高い介護業務の模範となることができる。
・自身の目標や課題が明確で、自己研鑽を怠らずにキャリアアップに向けて自己決定ができる。
・リーダーシップを発揮してチームケアの中心的な役割を担うことができる。

参考:厚生労働省「キャリアパスガイドライン(素案)(2)スキルのイメージ①社会力②介護力 」

3.昇給、給料アップが期待できる!


目標を設定し達成することはスキルアップにつながりますが、その努力は給料面に反映されます。

厚生労働省の平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果を見ると、資格の有無で給料に差があります。

キャリアパスを導入し明確な道筋をもとにスキルアップを重ねれば、給与額を上げることができるのです。

資格 平均勤続年数 平均給与額
介護福祉士 8.2 307,100円
社会福祉士 7.6 336,140円
介護支援専門員 11.4 347,570円
実務者研修 6.9 285,180円
介護職員初任者研修 6.5 276,450円
保有資格なし 4.6 258,540円

参考:厚生労働省「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果 p172」

>【最新版】介護職の平均給料って?給料を上げるには?気になる疑問を解決!

4.モチベーションアップで質の高いケアが提供できる

明確な目標、スキルアップ、給料アップという要素を満たせば、多くの人は仕事に対するモチベーションが高まります。

そして、やる気に満ちて仕事に取り組むようになれば利用者さんへのケアの質は向上します。

つまり、キャリアパスの導入によって、資格者としての専門性を高めるだけでなく「働き続けたい」と思える環境が整います。

【介護事業所】5つのメリット

介護職は離職率が高いため、介護事業所側は人材の確保が急務と言えます。
キャリアパスの導入は、そんな事業者側の課題を解決する方法としても期待されています。

次は、介護事業者にとってのメリットを見ていきましょう。

1.介護職員を適切に評価できる!

キャリアパスでは等級ごとにチェックリストを作成し、できる仕事内容をチェックしたり、筆記や実技試験が行われることもあります。

客観的に評価しやすい内容なので、評価者が違っても評価結果が統一されやすくなり、えこひいきなどがなくなります。

2.人材育成を計画的にできる

事業所側には、人材育成のスケジュールがたてやすくなるというメリットもあります。

経験年数に応じた作成が勧められているため、職員にはどのくらいの年数でどんな立場になっていてほしいかも明確に分かります。

人材の育成には段階的な教育が必要ですが、キャリアパスでイメージが作成されていれば、指導や研修も行いやすくなります。

【研修体系のイメージ】
社会力や介護力、働く意欲の獲得や強化に向けて、各ステップで必要な研修の例を紹介します。

ステップ1 社会力や介護力を養う基礎的な研修

(例)基礎介護技術の研修、社会人の接遇やマナーの研修など。

ステップ2 介護力や社会力を応用できる発展的な研修

(例)認知症ケアに関する研修、医学的知識を習得する研修、家族支援に関する研修など。

ステップ3 介護力や社会力の質を高める専門的な研修

(例)リーダーシップに関する研修、アンガーマネジメントに関する研修など。

参考:厚生労働省「キャリアパスガイドライン(素案)(5)研修体系のイメージ」

3.介護職員の離職防止と定着率アップ!

公益財団法人 介護労働安定センターによる「平成29年度 介護労働実態調査」では、次のような数値が明らかになっています。

  • 訪問介護員、介護職員の1年間の採用率は17.8%に対し、1年間の離職率は16.2%と高値である。
  • 離職者の65.2%が勤務年数3年未満である。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働の現状について」

調査の結果から分かることは、新規で採用しても離職する職員が同じくらいの人数いるため、慢性的な人手不足はほとんど解消されません。

また、離職者の約半数以上は勤務経験が浅い職員ばかりです。

新規で採用してプロフェッショナルに成長するまでの間、いかに離職率を下げるかが慢性的な人手不足を解消するひとつの手段になるのです。

そこで、重要な役割を担う対策が「キャリアパス」の導入です。
キャリアパスを導入することによって適切に評価することが可能になり、職場環境が安定します。
その結果、介護職員の離職率が低下し、定着率も高くなることが期待されます。

>介護職の離職率はどれくらい?他業種と比べて高い理由は?

4.サービスの質が向上し、集客率アップ!


キャリアパスをもとにスキルアップしていくスタッフが増えれば、サービスの質の向上も狙えます。
サービスの質が良い施設と聞けば、その施設を利用したい人は多くなるでしょう。

介護業界は、サービス利用者がいなければビジネスは成立しません。

集客率がアップすれば、施設としても安定した収入が得られるため大きなメリットになります。

安定した収入によって職員への待遇面の改善につながれば、定着率が上がり働きやすい環境を整備することができます。

職員の生活や心にゆとりが生まれると、業務の効率がアップします。

時間にもゆとりが生まれて提供する介護の質も向上し、好循環が生まれるのです。

5.処遇改善加算が受けられる!

介護職員処遇改善加算とは、区分ごとに設定された要件を満たす事業所で働く介護職員への賃金改善を行うための加算です。
制度の目的は、処遇改善を図るための環境を整備することと、加算分を介護職員の給料の改善に充てることです。

処遇改善加算は5区分に分かれていて、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」をどの程度満たしているかで当てはまる区分が決まります。
そして、事業所が各事業所の指定権者へ届出を出す必要があります。

指定権者は、事業所の形態や規模によって都道府県または市町村など異なるため、確認をしましょう。

処遇改善加算を簡単に考えると、キャリアパスの導入具合で給与を加算する制度、ということです。

区分 月額 条件
加算1 37,000円相当 キャリアパス要件1、2、3全部と職場環境等要件
加算2 27,000円相当 キャリアパス要件1と2と職場環境等要件
加算3 15,000円相当 キャリアパス要件1か2と職場環境等要件
加算4 13,500円相当 キャリアパス要件1、2、職場環境等要件のどれかを満たす
加算5 12,000円相当 キャリアパス要件1、2、職場環境等要件のどちらも満たさない

参照:厚生労働省「介護職員処遇改善加算」のご案内

では、介護職員処遇改善加算に関係しているキャリアパス要件とはどのようなものなのでしょうか?

>処遇改善加算とは?介護職ならみんな対象?いくら増えるの?

【キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲ】
名称 要件の内容 要件の解説
キャリアパス要件I 職位・職責・職務に応じた任用要件と賃金体系の整備を行うこと。 フロアリーダー、主任、上級ヘルパーなど介護職員としての職位を定めます。職位ごとに職責や職務内容を定め、それらの職位につく場合にはどのような条件が必要なのかを明記します。職位ごとの賃金体系を定め、就業規則などで職員に周知する必要があります。
キャリアパス要件Ⅱ 資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること。 介護職員の資質の向上に向けた目標を設定します。その上で、研修計画を定め研修機会の提供や技術指導などを行います。研修後は職員の能力の評価が必要です。また、資格取得のための費用の助成やシフトの調整などの支援も含まれる場合があります。
キャリアパス要件Ⅲ 経験もしくは資格などに応じて昇級する仕組み、又は一定の基準に基づき定期的に昇給を判定する仕組みを設けること。 勤続年数や経験年数に応じて昇級する仕組みや介護福祉士などの資格取得に応じて昇給する仕組み、実技試験や人事評価などの結果に基づき昇級する仕組みを整備する必要があります。

参照:厚生労働省「介護職員処遇改善加算」のご案内

キャリアパス導入の流れ

キャリアパスを導入するには、下記のような流れが必要です。

  1. 役職の階層を設定
  2. 階層に名前と定義を定める
  3. 業務内容の設定
  4. 業務に必要な能力の設定
  5. 能力に必要な研修の設定
  6. 給料の設定
  7. 昇格条件の設定

参照:静岡県「キャリアパス構築の手順」

キャリアパス導入モデル事例

次は具体的な内容のわかるモデル事例をみてみましょう。

社会福祉法人愛生会

【モデル事例の課題】
10年前から退職者が多い

【モデル事例の概要】
職員数…108名
施設形態…特別養護老人ホーム・通所介護

【導入したキャリアパスの内容】
危機感を持った施設長自ら、キャリアパスの導入・改革を始める。
辞める理由を探るのではなく、辞めたくなくなる環境づくりを目指した。

  • 各職員に求められる役割や能力などを明確にして、職員のモチベーションにつながる制度を整備する。
  • 制度の推進者である管理職の育成に力を入れて、ヒューマンスキルを身につける研修を繰り返し行う。
  • 円滑なコミュニケーション、明るい社風、価値観の共有を図る仕組みづくりと、職員同士で褒めて承認することの意識化を図る。
  • 考課者のスキルを高めて、職員を客観的に評価できるように変える。
  • キャリアアップを見据えた面接制度の導入。

【得られた成果】
10年間の取り組みで2年連続して離職者はゼロに変化した。

社会福祉法人 和松会

【モデル事例の課題】
給与体系が整っていない

【モデル事例の概要】
職員数…170名
施設形態…軽費老人ホーム、特別養護老人ホーム

【導入したキャリアパスの内容】
適切な処遇には、評価方法の見直しや法人が目指す職員像の明確化が必要と考え、人事制度全体を見直した。

  • 職種の役割を明確にした上で、職層・等級を定める評価制度を導入する。
  • 職員間で相互評価できる仕組みの整備を行う。
  • 評価結果を給与・賞与に反映する。

【得られた成果】
職員の仕事を見る目が広がった。
現在では、チーム力を上げる仕組みとして機能している。

東京都介護職員キャリアパス導入促進事業

東京都は、介護職員の育成と定着促進を図るため、平成27年度から「東京都介護職員キャリアパス促進事業」を実施しています。

条件を満たせば、事業費補助金が受けられる仕組みです。
事業は4つに分かれていて、

  1. キャリアアップした際の手当の支給などを行なった事業所が補助を受けられる【キャリアパス導入促進事業】
  2. キャリアパス導入促進事業を継続的に行って、離職率の改善が図れた事業所が補助を受けられる【専門人材育成・定着促進助成金】
  3. 評価者(アセッサー)の資格取得を促進する事業所が補助を受けられる【アセッサー講習受講支援】
  4. キャリアパスの導入や業務効率化に向けた研修などの支援を受けられる【人事制度改善等支援】

となっています。

キャリアパス導入促進事業は、介護キャリア段位制度のレベル認定者に認定手当相当額を支給した事業所が対象です。
補助額はレベル認定者1人に対して50万円までです。

専門人材育成・定着促進助成金は、3年間キャリアパス導入促進事業を継続した事業所が対象です。
加えて離職率が改善などした場合に、レベル認定者の人数に応じて90万円か180万円が補助されます。

アセッサー講習受講支援は、介護キャリア段位制度の評価者(アセッサー)資格を取得させる事業所が対象です。
補助額は1人に対して年間22,810円までです。

人事制度改善等支援は、専門家を介して事業所に合った賃金体系や研修体系などの導入を支援します。
参照:東京都介護職員キャリアパス導入促進事業

キャリアパス制度で未来ある介護を!


介護職は高齢者からのニーズが年々高まっています。
しかし、慢性的に人手が不足している状況はなかなか改善しません。

そんな現在の状況を打破するためには、キャリアパスの導入が手助けとなってくれます。

キャリアパスは客観的に評価できることが特徴のため、低賃金と言われる給料、高い離職率や定着率、このような介護職の課題を解決してくれます。

課題解決につながるキャリアパスの導入は、今後の介護業界全体の未来を明るくしてくれると言えます。

【介護職のキャリアパス】導入のメリットは?導入の手順やモデル事例を紹介!

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