深刻な介護士の不足…データからわかる問題点は?改善策は?

介護士不足が深刻な問題となっています。
介護労働安定センターの調査によると、「介護士が不足している」と答えた事業者は6割超。

介護士不足を解消するには、介護業界の「離職率が高い」「新規採用が困難」という2つの問題点を解決しなければなりません。

そのため国は、介護離職ゼロに向けた【介護人材確保対策】を考案しました。
介護職の新規参入促進も期待できるといわれています。

この記事では介護士の不足現状と、介護士不足の要因、介護人材確保対策の取組内容について解説します。

データで見る!介護士不足の実態

「介護人材が不足している」とよく聞きます。
実際どのくらい不足しているのでしょうか。

公益財団法人・介護労働安定センターが平成29年10月に行った調査結果と、厚生労働省のデータをもとに、介護従業員の不足感や人材不足の理由を見ていきましょう。

実態1.従業員の不足感は6割以上

介護サービスに従事する従業員の不足感は66.6%と、平成25年以降、4年連続して増加しています。

職種別に見ると「訪問介護員」の不足感が最も高く(82.4%)、次いで「介護職員」の不足感が66.9%でした。

介護サービスに携わる半数以上の人が、人手不足を実感しながら働いています。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター 介護労働実態調査

実態2.2025年の介護士不足は推計約55万人

2025年というと、介護の2025年問題が起こる年です。
高齢者人口は約3500万人に達するといわれています。

厚生労働省は、2020年度末までに約26万人、2025年度末までに約55万人、年間6万人程度の介護人材を確保する必要があると公表しました。

高齢者数は増えていく一方で、介護士不足は解決されていません。
需要と供給の開きが大きくなってきています。

なぜ介護士はこんなにも不足しているのでしょうか?
次に人材不足の要因について解説します。

参考:厚生労働省 「福祉・介護人材の確保に向けた取組について」平成30年

>【介護の2025年問題】人材不足はどうなる?対策は?

なぜ足りない?介護士不足の5つの要因

なぜ介護人材は不足しているのでしょうか?
主な要因は5つです。

  1. 新規採用が難しい
  2. 離職率が高い

1.新規採用が難しい

介護保険サービス事業所の人材不足の理由で最も多かったのは、「採用が困難である」です。

採用が困難である原因は、

  • 同業他社との人材獲得競争が激しい(56.9%)
  • 他産業に比べて、労働条件等が良くない(55.9%)
  • 景気が良いため、介護業界へ人材が集まらない(44.5%)

などが挙げられました。

以下の表は、雇用管理の状況を表しています。

非正規職員の採用率が高いことがわかります。
特に介護職員は非正規職員に頼っている状況です。

正規職員の労働条件が他の業界に比べて良くないことが要因だと考えられます。

訪問介護員 介護職員 2職種合計
正規職員 非正規職員 正規職員 非正規職員
採用率 17.5 14.2 15.1 25.0 17.8

2.離職率が高い

訪問介護員と介護職員2職種合計の1年間(平成28年10月1日から平成29年9月30日)の離職率は16.2%でした。

職種別に見ると訪問介護員は、正規職員の離職率が高いです。
昨年度と同様に、介護職員は非正規職員の離職率が高い傾向になっています。

訪問介護員 介護職員 2職種合計
正規職員 非正規職員 正規職員 非正規職員
離職率 17.0 13.8 14.3 20.6 16.2

離職者の勤続年数を見ると「1年未満の者」が38.8%と最も高く、新規参入した人ほど離職しやすいという結果が出ています。

なぜ1年もたたず離職してしまう人が多いのでしょうか?
介護士の主な離職理由を紹介します。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター 介護労働実態調査

主な離職理由

介護士の主な離職理由は3つです。

  1. 身体的負担が大きい
  2. 精神的にも大変な仕事
  3. 他産業に比べて低賃金

それぞれ詳しく解説します。

1.身体的負担が大きい

介護士は身体的負担が大きい仕事です。

介護労働実態調査によると、「労働条件等悩み・不安・不満等」の項目で「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」と回答した人は31.3%でした。

介護士の仕事内容は身体介助など体力が必要です。
腰をかがめた姿勢をとることも多く、腰痛持ちになりやすい仕事でもあります。

参考:厚生労働省 介護労働の現状

2.精神的にも大変な仕事

「労働条件等悩み・不安・不満等」で「精神的にきつい」は28.5%でした。

「精神的にきつい」と感じる要因は様々です。

  1. 死が身近
  2. ハラスメント被害を受けやすい
  3. 職場の人間関係

中でも「職場の人間関係に問題があったため」は、「直前の介護の仕事を辞めた理由」の1位で、24.7%でした。

沢山の職種が共に働く職場のため、トラブルになることも多いようです。

参考:厚生労働省 介護労働の現状

3.他産業に比べて低賃金

下記の表は、一般労働者の平均賃金を表しています。

産業別にみると、「社会保険・社会福祉・介護事業」が他の2つの産業と比べて約3.5~4.5万円低いことが分かります。

職種別にみると「ホームヘルパー」の給与が最も低いです。

介護労働実態調査によると、「労働条件等悩み・不安・不満等」の項目で「人手が少ない」に次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が2位で、43.6%という結果でした。

男女計 男性 女性
現金給与額(円)
産業別 医療・福祉 294,400 375,500 264,500
社会保険・社会福祉・介護事業 238,400 270,600 226,300
サービス業 273,600 297,700 216,800
職種別 ケアマネージャー 258,900 281,100 252,700
ホームヘルパー 218,200 235,000 213,000
福祉施設介護員 218,900 235,400 210,600

心身共に大変な仕事であるのに、労働に見合う賃金が支払われていないと感じる方が多いのでしょう。

賃金が低いことは、人材不足に大きな影響を及ぼしています。

参考:厚生労働省 介護人材の確保について

>介護離職の問題点とは?なぜ後悔する?再就職はできる?

介護人材確保のための対策

厚生労働省は「介護離職ゼロ」に向け、3つの介護人材確保対策を打ち出しました。

  1. 潜在介護人材の呼び戻し
  2. 新規参入促進
  3. 離職防止・定着促進

3本柱のPDCAを繰り返しつつ、2020年初頭までに約25万人の介護人材を確保することを目標にしています。

それぞれの概要を見ていきましょう。

参考:厚生労働省 「介護離職ゼロ」の実現に向けた 介護人材確保対策について

参考:厚生労働省 介護人材確保対策 (参考資料)

1.離職した”潜在”介護人材の呼び戻し

介護福祉士の登録者数と、実際の介護職従事者数がかけ離れていっています。

打開策として考えられたのが、離職した介護人材の再就職支援です。

具体的には、離職者に対する知識や技術を再確認するための研修や、ハローワークや福祉人材センターにおけるマッチング支援の実施を行ってきました。

再就職準備金の貸付(上限20万円)や、離職した介護人材の届出システムの構築も進められています。

2.新たに着目する3つの人材!新規参入促進

介護業界の新しい担い手として、3つの人材が期待されています。

  1. 学生
  2. 中高年齢者
  3. 外国人

それぞれが介護職に就くためのサポート制度が整えられています。
詳しく見ていきましょう。

学生の就労支援

介護職を目指す学生の増加と入学後の就学を支援するための、介護福祉士等就学資金貸付制度の拡充が行われました。

卒業後の介護現場への就労・定着促進効果も期待されています。

具体的には、

  • 介護福祉養成施設の学生への学費貸付
  • 生徒、保護者、進路指導担当者への理解促進のため学校訪問
  • 入門的研修・職場体験の実施

などです。

中高年齢者のボランティア支援

リタイア後のセカンドライフに、介護現場での就労を促進しています。

介護分野への関心が高い約120万人に、将来的に介護職に就労してもらうための取り組みが行われてきました。

  • 介護職として従事する際に必要となる基礎的な知識・技術を学ぶための入門的な研修や職場体験の実施
  • 中高年齢者を労働者として受け入れる際の介護事業者に求められる環境整備(業務フローの改善、人事労務管理制度の再考など)の支援

ほかにも都市部での需要増加見込みがある訪問介護員の確保のため、働きながら初任者研修の終了を目指す方に助成金が支援されます。

外国人労働者の雇用拡大

在留資格「介護」を導入し、介護福祉士を目指す外国人留学生の支援が行われています。

一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための制度です。

具体的な支援制度は、

  • 介護福祉士修学資金の貸し付け推進
  • 日常生活面での相談支援

などがあります。

3.離職防止・定着促進

現在介護職で働いている人の離職防止・定着促進策は主に3つです。

  1. 介護職員の処遇改善加算
  2. 介護ロボットの活用・開発の促進
  3. 介護施設内に保育施設を設置

それぞれの内容を見ていきましょう。

介護職員の処遇改善加算

1つ目は、介護職員の処遇改善加算です。

過去には月額53,000円相当の処遇改善実績がありますが、今後も他産業との賃金差がなくなるよう、介護報酬等の改定に合わせて処遇を改善していく考えがあります。

介護職員に月額8万円相当の処遇改善

介護人材不足の解消のため、厚生労働省はさまざまな対策を行ってきましたが結果はあまり出ていません。

平成25年度から平成29年度にかけ、介護職員の離職率は低下傾向で他の産業と比べても依然としてやや高い水準です。

厚生労働省は「介護人材確保のための取組をより一層進める」姿勢で、2019年10月から介護職員にさらなる処遇改善を図ると発表しています。

具体的には、「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」というものです。

公費1,000億円程度を投じるとしていますが、この処遇改善にはいくつかの問題点も指摘されています。

1つは「月額8万円の賃上げの対象者となる“勤続10年以上の介護士”がほとんどいない」ということです。

「月8万円賃上げされたとしても介護福祉士の収入になるとは限らないのではないか」との懸念もあります。

国から支給されたお金は、一旦介護事業者に入ります。

介護福祉士にどの程度支給するかは事業者の判断によるため、事業所の評価によって賃金が大きく変わることもありうるという問題です。

参考:厚生労働省 介護人材の処遇改善について

>処遇改善加算とは?介護職ならみんな対象?いくら増えるの?

介護ロボットの活用・開発の推進

2つ目は、介護ロボットの活用推進や開発支援の促進です。

ロボット技術を応用し、サービス利用者の自立支援や介護者の負担軽減を図ります。

平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」で、今後介護現場でのロボットやセンサー等の活用について効果実証を進め、次期介護報酬改定の際に制度上の対応を行うとしています。

今後の課題として、ロボット導入費用の低額化、開発現場と介護現場の意見交換を密に行うことが挙げられます。

介護施設内に保育施設を設置

3つ目は、介護施設内の保育施設設置です。

仕事を継続したい意思はあるものの「出産・育児と両立できない」という理由で離職する人が多いことを受けての対策です。

働き続けられる環境整備が離職率低下のカギになるでしょう。

今後も介護士不足解消のための対策が必要

介護人材不足の実態と、要因、対策を見てきました。

2025年に向けて、さらに人材不足が顕著になりそうです。

要因である「新規採用が難しい」点と、「離職率の高さ」を解決するために行われている対策も紹介しました。

「潜在介護人材の呼び戻し」「新規参入促進」「離職防止・定着促進」策を、今後も続けていく必要があります。

深刻な介護士の不足…データからわかる問題点は?改善策は?

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