【2025年問題】介護業界の課題5つ!地域包括ケアシステムが解決の鍵?民間での対策は?

厚生労働省の発表によると、2025年に日本の高齢者人口は約3,500万人に達すると推計されています。

要介護人口の増加にともない、介護業界は人材不足介護難民の増加老老介護・認認介護などたくさんの課題を抱えています。

この記事を読んでいる方の中にも、

「現在介護業界で働いているけれど、この先労働環境はどうなっていくの?」
「近い将来両親に介護が必要になるかも……今から出来る対策は?」

といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そもそも2025年問題とは?という疑問から、それに伴う介護業界の課題、国・民間それぞれの対策について解説します。

2025年問題(社会保障危機)とは?

「2025年問題」とは、介護業界に限られたものではありません。
まずは簡単に2025年問題について解説します。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年に、日本の高齢者人口はピークを迎えます。

後期高齢者になるということは、多くのひとが何らかの医療や介護が必要な状態になるということです。

つまり、2025年には過去に例をみない社会保障費の増大があるのです。
有効な手を打てなければ日本の社会保障制度は破たんしかねないとされています。

さらに2050年には「1人の若者が1人の高齢者を支える」いわゆる「肩車型」社会が訪れることが予測されています。

【65歳以上高齢者人口(割合)】

2012年8月 2015年 2025年 2055年
3,058万人(24%) 3,395万人(26.8%) 3,657万人(30.3%) 3,636万人(39.4%)

参考:厚生労働省 今後の高齢人口の見通し

【介護の2025年問題】課題4つ

介護の2025年問題は、大きく4つの課題に分かれます。

  1. 要介護者を支える担い手不足
  2. 介護難民の増加
  3. 老老介護、認認介護の増加
  4. 孤独死リスクの増加

など、いずれも早急な改善が求められています。
それぞれを解説していきましょう。

1.介護人材の不足

日本の高齢人口がピークを迎える中で、介護の現場では人手不足がさらに深刻化する恐れがあります。

介護労働安定センターの平成29年度「介護労働実態調査」によると、事業所における介護サービスに従事する従業員の不足感は66.6%です。

前年度と比較すると4%も増加しています。

介護士不足が離職率にも拍車を

慢性的な介護人材の不足は、離職率にも影響しています。

同調査によると、1年間の採用率は17.8%に対し、離職率は16.2%にもなります。

前年度よりも離職率は改善されているものの、慢性的な人手不足が解消するまでには至りません。

2025年を迎えるころには介護を受けたい人と介護をする人、その需要と供給のバランスが大きく崩れる可能性があります。
介護人材の確保するための早急な対策が望まれます。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター 平成29年度 「介護労働実態調査」の結果

>深刻な介護士の不足…データからわかる問題点は?改善策は?

2.介護難民の増加

介護人材の不足に加えて、受け皿である介護サービス事業所が不足することも懸念されています。

そのため、介護を受けたくても受けいれ先がない「介護難民」が増える恐れがあります。

日本創成会議「東京圏高齢化危機回避戦略」によると、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の東京圏は、今後急速に高齢化が進行します。

2025年における介護需要は、千葉県、埼玉県、神奈川県で50%の増加です。

すでに東京圏では、都区部で利用できる施設がなく、要介護者が周辺地域のサービスを利用するケースも多くあります。

介護難民問題は、さらに深刻化することが予測されます。

同会議では、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、全国で約43万人が介護難民になるという試算もあります。

介護の人材確保と並行して、受け皿になる施設などの整備も進めていかなければ、介護難民の課題は解決されません。

参考:日本創成会議
参考:livedoor NEWS 介護難民が10年後には43万人

3.老老介護・認認介護の問題

日本は核家族化が進むにつれ、老老介護や認認介護などの問題が浮き彫りになっています。

老老介護とは?

高齢者が要介護者の主な介護者として介護をせざるを得ない状況のこと

厚生労働省の国民生活基礎調査(平成28年)の結果によると、主な介護者の約7割が60歳以上です。

高齢者が介護をする場合、体力や気力の面でも大きな負担になります。

老老介護は、お互いに体調を崩す恐れもあるため、在宅生活を続けることは困難な状況です。

参考:厚生労働省 グラフでみる世帯の状況

また、老老介護と同じく問題になっているのが、認認介護です。

認認介護とは?

認知症の高齢者が認知症の要介護者を介護せざるを得ない状況のこと

認知症の高齢者は、2025年には約320万人になると推計されています。

高齢者のみの世帯の増加など介護力不足の問題も重なって、認認介護のケースが増えることが予測されます。

参考:厚生労働省 今後の高齢化の進展

4.孤独死増加の問題

2025年までに、高齢者世帯の約7割を一人暮らし世帯、もしくは高齢夫婦のみの世帯が占めると推計されています。

中でも高齢者の一人暮らし世帯の増加が著しく、2025年には約680万世帯(約37%)に達すると見込まれています。

高齢者の一人暮らし世帯が増えて、介護難民状態に陥ってしまえば、孤独死が増加する恐れがあります。

孤独死を防ぐためにも、地域で高齢者を支える「地域包括ケアシステム」の構築に向けて、対策を講じる必要があります。

参考:厚生労働省 今後の高齢化の進展

>【介護が抱える6つの問題】現状は?解決策は?

わかりやすく解説!介護の2025年問題に向けて厚労省が行う対策5つ

2025年問題にともなう介護人材不足に向け、厚生労働省は5つの主な対策を掲げています。

対策の概要をひとつずつ見ていきましょう。

対策1.介護職員の処遇改善

介護の仕事と聞いて「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージを抱く人もいるかも知れません。

必ずしもすべての介護現場が3Kに該当するとは言えませんが、「労力の割に給料が安い」として介護職員の処遇改善を求める声は以前よりありました。

また、厚生労働省の「平成25年賃金構造基本統計調査」によると、介護職員の平均賃金の水準は全産業と比較しても低い傾向です。

初任給を比べてみてもその差は歴然としています。

短大・大卒程度(20〜24歳)の初任給は、全産業で平均19万2千円です。

それに比べて福祉施設介護員は、男性で17万9千円、女性で17万6千円です。

参考:厚生労働省 介護労働の現状
参考:厚生労働省 調査の概要

そこで厚生労働省は、数年ごとに介護職員の月額平均をアップする「処遇改善加算」などの改善策を取ってきました。

  • 平成21年度〜月額平均2.4万円の改善

平成21年度では、介護報酬+3%の改定(+9千円の改善)が行われました。
また同年度の補正予算で、月額+1.5万円が改善され、月額2.4万円の改善となりました。

  • 平均24年度〜月額平均0.6万円の改善
  • 平均27年度〜月額平均1.3万円の改善
  • 平均29年度〜月額平均1.4万円の改善

平成29年度は、ニッポン一億総活躍プランなどに基づき、臨時で介護報酬の改定が行われています。
月額1万円相当の処遇改善加算の拡充を実施しています。

参考:厚生労働省 介護人材確保対策

このように、平成21年度からの10年弱で、合計して月額平均5.3万円相当の処遇改善が図られてきました。

しかし、過去の処遇改善が介護人材不足を解消したとは言えない現状です。

介護職員の離職率は低下傾向にあるものの、産業計と比べるとやや高い水準となっています。

さらなる処遇改善で月額8万円の賃金アップ

2019年10月の消費税率の引き上げにともない、厚生労働省はさらなる処遇改善を予定しています。
具体的には、勤続10年以上の介護福祉士の月額を8万円アップするというものです。

しかし、対象となる介護福祉士の数が少ないことから、大きな効果は得られないのではないかと疑問視する声もあります。

対策2.多様な人材の確保・育成

介護福祉士を目指す学生への修学資金貸付や、一旦介護職を離れた人材をターゲットにした再就職準備金貸付などの制度もあります。

人材確保が特に困難な地域では貸付額を倍増するなど、地域の事情に応じた対策もとってきました。

今後さらに講じる対策としては、

  • 介護未経験者に対する入門研修を創設し、研修受講後のマッチングまでを一体的に支援
  • 介護福祉士養成施設における人材確保の取組を支援

といったことが考えられています。

対策3.離職防止・定着促進・生産性向上

介護人材の流出を防ぎ、定着を促す対策も取られています。

具体的には、

  • 介護ロボットの活用推進
  • 介護施設や事業所内に保育施設を設置
  • キャリアップのための研修受講費負担軽減
  • 代替職員の確保支援

などです。

特に1つ目に挙げた「介護ロボットの活用推進」は、今後も加速していく計画です。

株式会社矢野経済研究所の調査によると、国内介護ロボット市場規模は次のように推移する予測です。

  • 2017年度 14.3億円
  • 2018年度 19.3億円
  • 2019年度 28.6億円
  • 2020年度 33.7億円
  • 2021年度 37.6億円

参考:株式会社矢野経済研究所

経済産業省と厚生労働省は、特に移乗、移動、排泄、見守り、入浴などの支援を行う介護ロボットを重点的に開発するとしています。

参考:厚生労働省 介護ロボットについて

対策4.外国人介護士の受け入れ環境を整備

日本国内だけでなく外国人材を採用しようという動きもあります。

2017年9月には入国管理法が改正され、在留資格に「介護」が創設されました。

送り出し国や業務内容に制限はなく、就労期間は最長5年(延長可)です。

ただし、在留資格「介護」を得るためには、以下のような事前ステップがあります。

流れ 在留資格
1.外国人留学生として日本へ入国 留学
2.介護福祉士養成施設で修学(2年以上)
3.介護福祉士の国家資格を取得
4.在留資格を「留学」→「介護」に変更 介護
5.介護福祉士として業務従事

参考:入国管理局 

対策5.地域の特性に応じた「地域包括ケアシステム」の推進

地域にサポートセンターを設置し、医療・介護・生活支援などのサービスを組み合わせて一体的に提供するサービスを「地域包括ケアシステム」といいます。

地域包括ケアシステムの目的は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるようにすることです。

いつまでも元気で暮らすために、老人クラブや自治会の開催する健康イベントに参加。
病気になったら地域のかかりつけ医に診てもらい、介護が必要になったら在宅サービスや福祉施設を利用する……。

地域包括ケアシステムでは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される生活圏域を想定しています。

参考:厚生労働省 地域包括ケアシステム

>【地域包括ケアシステム】どうして必要?具体事例や今後の課題を解説!

対策6.医療・介護制度の改革に向け増税

2025年問題では、高齢者を取り巻く環境やサービスを充実させるだけでは根本的な解決策につながっていません。

社会保障の安定化に向けて、財源を確保しなければ基礎年金制度なども維持できない状態なのです。

そこで、消費税の引き上げが段階的に行われています。

消費税の増収分は、すべて社会保障の安定化に向けることになっています。

「子ども・子育て」「医療・介護」「年金」のそれぞれの分野で、社会保障が充実するように体制の整備を行っているのです。

特に「医療・介護」の分野では「必要な時に、必要な医療・介護サービスを受けられる社会」を目指して取り組みが始まっています。

その中でも、医療・介護の制度では、保険料を所得に応じて見直す対策が講じられています。

  • 国民健康保険・後期高齢者医療の低所得者に対する保険料軽減措置の対象拡大(平成26年4月〜)
  • 高額療養費制度の負担額について所得に応じて見直し、中低所得世帯の負担軽減(平成27年1月〜)
  • 介護保険の第1号被保険者(65歳以上)の低所得者について、さらに保険料軽減(平成27年度中に実施)
  • 短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大

所得に応じて保険料の負担を見直すことで、誰もが安定して適切なサービスを受けられる社会を目指しています。

参考:厚生労働省 社会保障制度改革の全体像

2025年問題に向けて自分で・民間でできる対策4つ

2025年問題に向けて、国が対策を始めています。

しかし、自分や民間でできる対策を並行して始めなければ、2025年問題を乗り越えることができません。

そこで、今からでも始められる対策を4つ紹介します。

1.将来のための貯蓄

現在、2025年問題における社会保障費の増大に向けて、政府は消費税の引き上げなどさまざまな対策を講じています。

しかし、国の対策だけでは改善できる保障はなく、基礎年金制度も維持できない恐れもあります。

介護が必要になった場合、介護サービスを利用するためには介護費用の自己負担があります。

将来に向けて、できれば早いうちから貯蓄を始めておきましょう。

施設に入りたくても入れない状態が続く恐れもあります。

「いくら貯めておけば安心」と具体的な貯蓄額までは明言できませんが、目安になる数字を紹介するので参考にしてみてください。

平成30年度の生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」では、介護にかかる費用の月額は、平均7.8万円です。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター

介護費用だけでも1年間で100万円弱の金額です。

そのため、将来に備えて、少しでも多く早めに貯蓄を始めましょう。

2.要介護状態にならないようにする

要介護状態になってしまっては、介護費用がかさんでしまいますよね。

そこで、「介護予防」に取り組むことが大切です。

元気で健康な高齢者が増えれば、介護サービスが必要なくなるだけでなく、ボランティアなどの担い手にもなれます。

地域包括ケアシステムでは、介護予防や高齢者のボランティア活動に力を入れています。

地域で高齢者を支えるシステムづくりが、2025年問題を乗り越えるポイントになります。

そのためにも、自分が健康でいられるように運動や脳トレなどを始めて、要介護状態にならないように注意しましょう。

3.身近な人が介護が必要になったときの準備をする

健康に気をつけていても、予想できない病気や事故で要介護状態になってしまうこともあります。

身近な人が介護が必要になった時に、備える対策も重要です。

必要な時に必要なサービスが受けられない状態に対応するためにも、介護の知識や技術などの勉強をしておくことも1つの対策です。

介護の知識や技術を身につけておけば、いざという時のために心の準備も整います。

介護教室やヘルパーの養成講座なども短期間で行われているため、活用してみましょう。

4.外国人による介護を受け入れる

国はさまざまな対策を講じていますが、約38万人の介護人材不足を日本国内だけで充足することはとても困難な状況です。

そこで有効なのが、海外から労働力を充足することです。
日本では平成20年度から、インドネシアなどの国からの労働者受け入れを始めています。

日本とインドネシア、フィリピン及びベトナムとの間で締結された日尼経済連携協定(日尼EPA)、日比経済連携協定(日比EPA)及び日越交換公文(日越EPA)に基づいて、インドネシア人・フィリピン人・ベトナム人介護福祉士候補者を受け入れています。

外国人から介護を受けることに抵抗を感じる施設や利用者もいるようですが、今後は「外国から来ていただく」という姿勢でなければ、優秀な外国の介護人材を受け入れることも難しくなります。

EPAで受け入れている人材の多くは高学歴者です。

すでに、オーストラリアやカナダと人材の争奪戦が起きています。

外国人の介護人材からすれば、日本よりも英語でコミュニケーションが可能な国の方が魅力的です。

そのため、外国からの介護人材が日本ではない国に流出してしまう恐れもあります。

また、日本以外のアジア諸国でも高齢化が進行中です。

今後、中国などでも介護人材の争奪戦が必ず起こります。

海外から来てくれた介護福祉士候補者にとって働きやすい環境を提供することも求められています。

参考:公益財団 国際厚生事業団

2025年問題はどう対策するかが大切!

高齢者人口がピークに達することによる2025年問題について、国(厚生労働省)の対策民間レベルでできる対策を解説しました。

「必要な時に必要なサービスを受けられなくなる社会」では、漠然とした不安のもと、少子化も進んでいきかねません。

そうならないためにも、介護人材の確保地域包括ケアシステムの推進医療や介護の制度の見直しなどの対策を講じています。

やがて1人の若者が1人の高齢者を支える「肩車型」の厳しい社会が訪れる前に、国の方針をよく理解しながらできる対策を今から始めてみましょう。

【2025年問題】介護業界の課題5つ!地域包括ケアシステムが解決の鍵?民間での対策は?

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