認定介護福祉士は2015年にできたばかりの資格。
どんな資格か、あまり知らない方もいるかもしれません。
ここでは認定介護福祉士の役割や、資格取得方法などを説明します。
介護キャリアパスの新たな最上位資格について、いっしょに考えていきましょう。
認定介護福祉士とは?
認定介護福祉士とは、生活環境の異なるさまざまな利用者に対応し、質の高い介護やサービスをマネジメントしたり、地域包括ケアに対応するための考え方や知識を習得した介護福祉士のことです。
2015年8月に、一般社団法人「認定介護福祉士認証・認定機構」が、介護福祉士の上位資格として認定しました。
認定介護福祉士登録名簿によりますと、現時点(平成29年11月1日時点)の登録者数は「28名」と、まだ少ないのが現状です。
認定介護福祉士という新たな資格が最近になって登場した背景には、
- 2060年頃に向けて要介護高齢者人口のピークが続く
- 一方、生産年齢人口は一貫して減少する
- 上2項目により介護人材の確保が今後ますます困難になる
といったことが挙げられます。
サービスの量的な整備だけでなく、質的な保証が求められるようになり、「抜本的な対策」の1つとして、認定介護福祉士資格が誕生しました。
認定介護福祉士の3つの役割
認定介護福祉士に期待される主な役割は、以下の3つです。
- 施設・事業所内のサービスマネージャーとなること
- 介護サービス提供における連携の中核者となること
- 地域における介護力向上のための助言をすること
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
役割1.施設・事業所内のサービスマネージャーとなること
認定介護福祉士に期待される役割1つ目は、「施設・事業所内のサービスマネージャーとなること」です。
具体的には、どのような利用者に対しても最善の介護を実践できることや、知識を活用した介護を計画・提供することが求められます。
役割2.介護サービス提供における連携の中核者となること
認定介護福祉士に期待される役割2つ目は、「介護サービス提供における連携の中核者となること」です。
役割1つ目では、施設や事業者内のマネージャーとしての役割にふれましたが、ここでは他職種やそのチームと連携していくこと・連携の中核となることが求められます。
そのため、他職種からの情報やアドバイスを適切に理解した上で、介護チーム内で情報を共有し、介護実践に結びつけていけるスキルが必要です。
さらに、利用者の日頃の生活状況を他職種に伝えるための論理力や、利用者の状態変化に気づく観察力も求められます。
役割3.地域における介護力向上のための助言をすること
認定介護福祉士に期待される役割3つ目は、「地域における介護力向上のための助言をすること」です。
この役割に必要となってくるのが、地域とかかわる力です。
具体的には、
- 利用者の家族に対して、生活環境の整備や相談補助を行う
- 利用者の家族の不安を軽減し、適切なかかわりを支援する
- 地域のボランティアや介護福祉士への助言・支援を行う
- 介護に関する地域ニーズを把握・分析する
と、利用者を取り巻く家族・介護福祉士・地域へも幅広く関わっていくことが求められます。
ケアマネージャーとの役割分担はどうなる?
認定介護福祉士とケアマネージャー(介護支援専門員)との役割分担はどのようになっているのでしょう?
それぞれの仕事内容を整理してみましょう。
まず、認定介護福祉士の主な仕事内容は、ここまで見てきたように「施設のサービスマネージャーを担いつつ、他職種や地域との連携の中核となること」でした。
利用者に対してより質の高い介護を提供するため広く全体を俯瞰する位置づけであり、介護職チームのリーダーへの教育や指導も行う、マネージャー的存在です。
一方、ケアマネージャー(介護支援専門員)の主な仕事内容は、「介護サービス計画(ケアプラン)の作成」と「要介護者とサービス事業者との連絡調整」です。
介護福祉士のように直接介護サービスを行うことは少なく、書類作成や相談窓口になることが主な業務内容です。
認定介護福祉士と介護福祉士の3つの違い
「認定介護福祉士」と「介護福祉士」。
名前を並べると頭に「認定」がついているかいないかの違いだけですが、業務内容や資格取得にかかる時間にも違いがあります。
具体的な違いは以下3つです。
- 認定介護福祉士は「民間資格」、介護福祉士は「国家資格」
- 認定介護福祉士は直接的な介護業務が少ない
- 認定介護福祉士のほうが取得までの時間がかかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
違い1.認定介護福祉士は「民間資格」、介護福祉士は「国家資格」
まずは、資格を認定する主体が違います。
見出しの通り、認定介護福祉士は「民間資格」、介護福祉士は「国家資格」です。
- 民間資格とは……「民間団体や企業が」独自の審査基準を設けて任意で認定する資格です。
- 国家資格とは……法律に基づいて「国や国から委託を受けた機関が」実施する資格です。
違い2.認定介護福祉士は直接的な介護業務が少ない
介護福祉士が食事・排泄・入浴など利用者の身体援助を主な業務とするのに対し、認定介護福祉士は介護チームへの助言や地域との連携を主な業務としています。
そのため、介護福祉士と比較し、認定介護福祉士は直接的な介護業務が少ないです。
違い3.認定介護福祉士のほうが取得までの時間がかかる
資格取得という観点からは、介護福祉士より認定介護福祉士のほうが取得までの時間がかかります。
認定介護福祉士になるための道のりについては、次の段落で詳しく説明していきます。
認定介護福祉士への道のりと研修内容
ここでは認定介護福祉士になるための流れをざっくりと掴みましょう。
【前提】介護福祉士資格取得かつ実務経験が5年以上
【研修】認定介護福祉士養成研修の全過程を修了する
【申請】認定申請を行う
【審査】認定機構による審査を受ける
【認定】機構による審査の後、 「認定介護福祉士 認定証」が発行
資格取得の3つの条件
実務経験7~8年以上を想定する。
介護チームのリーダーとしての実務経験を有することが望ましい。
居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい。
※いずれかの経験がない場合には研修によって補うことができることとする。引用元:厚生労働省 認定介護福祉士(仮称)制度の方向性について
計600時間の養成研修カリキュラムを修了し、認定される
認定介護福祉士になるには、認定介護福祉士養成研修の全過程を修了することが必須条件です。
養成研修には「認定介護福祉士養成研修Ⅰ類」と「認定介護福祉士養成研修Ⅱ類」のがあり、合計学習時間は600時間ほど。
全過程の修了までには、目安として1年半ほどかかります。
次の段落で、I類とⅡ塁それぞれの研修内容を見ていきましょう。
「Ⅰ類」計345時間
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類では、介護福祉士養成課程では学ばない新たな知識を修得します。
具体的には、
- 医療
- リハビリ
- 福祉用具と住環境
- 認知症
- 心理・社会的支援
といった知識について学びます。
さらに、他職種との連携・協働を含めた認定介護福祉士としての十分な介護実践力を完成させます。
履修科目領域 | 科目 | 時間数 |
---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 15 |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 30 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 30 | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 10 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20 | |
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 30 | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 30 |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 30 |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 30 |
地域生活の継続と家族支援 | 30 | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 30 |
個別介護計画作成と記録の演習 | 30 | |
自職場事例を用いた演習 | 30 | |
Ⅰ類 | 計 | 345 |
「Ⅱ類」計255時間
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類では、Ⅰ類で学んだ知識をもって介護実践の応用力や指導力について学びます。
具体的には、認定介護福祉士に必要な、
- 指導力
- 判断力
- 考える力
- 根拠をつくりだす力
- 創意工夫する力
といった応用力を養成します。